セネガル戦後、国内にはえも言われぬ満足感が広がった。「引き分け」という結果にもかかわらずだ。そして「日本代表はこれほど心躍らされるサッカーができるのか」という驚きは世界中に広がった。ただし“戦果”を得られるかどうかは、6月28日23時(日本時間)にキックオフを迎えるポーランド戦まで持ち越された。圧倒的な攻撃力を持つポーランドに、日本はどう立ち向かうのか。元週刊サッカーマガジン編集長の北條聡氏が解説する――。
セネガル戦の後半、同点ゴールを決め喜ぶ本田(左)と大迫(写真=AFP/時事通信フォト)

敵将シセに「日本のほうが良かった」と言わしめた

まだ、何も決まっていない。

ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、日本が2大会ぶりのベスト16に進めるかどうかは、次のポーランド戦の結果次第だ。負ければ、敗退の恐れも十分にある。

しかしながら、不安よりも期待のほうがはるかに大きいだろう。いや、それくらいセネガル戦の出来が良かったからだ。

結果は2-2のドローだが、当の選手たちが「勝てた試合」と話していたほどである。また敵将のアリウ・シセも「日本のほうが良いプレーをしていた」と素直に認めていた。

もたついたのは立ち上がりの15分だったか。セネガルの前線からの圧力に対して受けに回り、何度もCKを与えてしまう。そして、クリアとパンチングのミスが重なって手痛い失点を喫したのも、この時間帯だった。

これまで日本は、W杯で先に失点して勝った試合は一度もない。引き分けに持ち込んだのも2002年日韓大会のベルギー戦だけである。そうした厳しい状況に直面しながらも、日本のイレブンは慌てず、騒がず、きわめて冷静だった。

結果的に2度のビハインドをはね返したのだから、タフである。今大会でも1試合に二度も追いついたのはスペインだけだ(6月25日時点)。その意味でも価値の大きい「勝ち点1」だろう。

ミスの少ない的確なプレーでセネガルの逆襲を回避

セネガルのシュート数は日本の2倍(14本)を記録したが、決定機の数では日本が上回っていた。勝てた試合――という見立ては、そこからも来ている。また、シセ監督は「日本に試合をコントロールされた」とも語っていた。

つまり、イニシアチブを握っていたのも日本だったわけだ。実際、ボールポゼッション(支配率)も54%を記録している。もっとも、ポイントだったのは「率より質」だろう。

チーム全体のパス成功率は84%だ。この点においても、セネガルの77%を上回っている。しかも、コロンビア戦と比べて不用意なパスミスやボールロストも少なかった。最も危険だったセネガルの逆襲(高速カウンター)をまともに食らうリスクを回避できた一因だろう。

この日のセネガルはポーランドを破った初戦と違い、4-4-2から4-5-1(4-1-4-1)にシステムを変えている。最終ラインの手前にアンカーを据えて、バイタルエリアを消す狙いだったか。

そして、1トップの後方に並んだ4人のMFが日本の2人のボランチと左右のサイドバックに圧力をかける。そこでボールをかすめ取り、一気に速攻へ転じれば勝機は十分――そう考えていたはずだ。