大阪地震とサッカーW杯の間隙を縫う記者会見

学校法人・加計学園の加計孝太郎理事長が、岡山市の学園本部で記者会見を開いた。愛媛県今治市での獣医学部新設を巡る初めての記者会見だった。

加計理事長は、愛媛県の文書にある「2015年2月25日」の安倍晋三首相との面会について、「記憶にも記録にもない」と全面否定した。

記者会見が始まったのは、6月19日午前11時過ぎだった。前日の18日朝には、大阪で震度6弱を記録する地震が発生し、新聞やテレビの記者たちはその対応で追われていた。さらに19日夜には、サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会の日本対コロンビア戦が予定されていた。

2018年6月19日、記者会見する加計学園の加計孝太郎理事長(右)と岡山理科大の柳沢康信学長(写真=時事通信フォト)

憶測だが、加計氏は「いまがチャンス」と考えたはずだ。大阪の地震とサッカーのW杯で新聞紙面やテレビ番組枠がいっぱいで、「きっと私の記者会見は小さく扱われる」と期待したのだろう。

しかも記者会見は加計学園が2時間前に地元の報道各社にファクスを送って一方的にスタートし、押し切る形でわずか25分で終わった。参加できるのも地元の記者に限られた。東京や大阪で加計学園の獣医学部新設の疑惑を追及する社会部記者たちははじき飛ばされた格好となった。

国民は一連の「もりかけ疑惑」で安倍政権に大きな不信感を抱いている。こんな記者会見で世論を納得させようとするのは、不信感に拍車をかけるだけである。なぜ、加計氏はそのあたりが分からないのか。

処分の内容も、安倍政権とどこか似ている

記者会見で加計氏は、加計学園が愛媛県に「2015年2月に安倍首相と面会し、獣医学部新設の話をした」との“虚偽情報”を伝えたことについて「多大な迷惑を掛けた」と謝罪した。

加計学園は愛媛県に対し、“虚偽情報”を伝えた事務局長を減給10%(6カ月)の処分とした。加計氏自身は自主的に給与の10%を1年間返納し、理事長の職は続ける。

この処分はあの改竄問題で揺れた財務省の処分にどこか似ている。

財務省は改竄を指示したとされる財務省理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官ら関係する幹部を減給などの処分としたほか、トップの麻生太郎財務相も減給処分の対象にした。だが、麻生氏は財務相をそのまま続けている。

加計学園の今回の処分は、幕を引きたい安倍政権と裏で打ち合わせたうえでの処分だったのではないか。信頼を寄せる腹心の友である安倍首相と、どこかでこっそり会って決めたとみられても仕方がない。