36歳の会社員は「性格の不一致」という理由で妻との離婚を決意した。妻は年収600万円の夫に対して、分譲マンションのローン返済や養育費などとして、当初の10年間で3120万円、52年間で9320万円の支払いを求め、夫はそれに合意した(明細内訳は「前編」参照)。だが、本当にそれだけの金額を支払う義務はあるのだろうか。行政書士で男女問題研究家の露木幸彦氏が考察する――。

「性格の不一致」で離婚した30代会社員の末路

会社員の高橋淳二さん(36)が妻(38)と離婚したい理由は、妻の「ヒステリー」「潔癖症」「暴言」の3つです。破局を迎える夫婦の原因はいくつか種類がありますが、最も多いのが「性格の不一致」です。性格の不一致とは、価値観や考え方の違いが原因でけんかが起き、それが何度も繰り返されることです。淳二さん夫婦はまさにこれに該当しています。

ここで客観的に淳二さんの夫としての態度を分析してみましょう。

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
夫:高橋淳二(36歳)→会社員(年収600万円)☆今回の相談者
妻:高橋千絵(38歳)→専業主婦
長女:高橋優奈(10歳)→高橋夫婦の娘
▼10年で3100万円超、50余年で9300万払わねばならないのか?
写真はイメージです(写真=iStock.com/chipstudio)

本記事の前編で説明したように、本人の言い分はあるにせよ、淳二さんは、結婚生活の中で妻の話をまともに聞こうとせず、妻の不満や不安を受けとめようとしませんでした。また自分の意見を妻にぶつけることもなく、口もきかない状況です。「妻と仲直りするために十分な努力をしたのか」と言えば、その答えは「ノー」でしょう。努力が足りないと言われても仕方がありません。

妻はどうでしょうか。淳二さんの話を聞く限り、この夫婦が犬猿の関係となった根本的な原因は妻にあるようです。しかも、大きなけんかが起きた後も、妻は淳二さんの嫌がることを続けていたといいます。「反省のない態度」は大きなマイナスポイントでしょう。

このように考えると、この夫婦が「不幸な関係」にあることは確かです。しかし「夫だけが悪い」、「妻だけが悪い」と言い切ることはできません。どちらにもそれなりの落ち度があります。

ただし、淳二さんのこれまでの振る舞いや言動は、10年で3100万円超、50余年で9300万円超という金額に値するほどの「悪事」なのでしょうか。また、その金額は妻が受けた苦痛(夫に離婚宣告されたこと)とつり合いがとれるのでしょうか。