2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げ。安倍政権に反対する野党勢力も、なぜか増税には賛成している。それでいいのか。先の総選挙で落選した元民進党選挙対策委員長の馬淵澄夫氏は「増税凍結、または消費税の減税を訴える政治勢力が必要だ」という。その理由とは。ノンフィクション作家の塩田潮氏が聞いた――。(後編、全2回)

スピード重視か合意の丁寧さかの判断は難しい

【塩田潮】旧民進党と希望の党の多数派が合流して、国民民主党が結党されました。

馬淵澄夫・元民進党選挙対策委員長

【馬淵澄夫・元民進党選挙対策委員長】それは評価しています。結党前、立憲民主党、希望の党、民進党の三つのグループがあったが、核となる競争力、資産、財産は何かというと、立憲民主党は政党支持率、民進党は地方組織と地方議員で、ある意味、金もある。希望の党は逆境にもかかわらず勝ち上がってきた民進党の議員が財産です。三つが一つになれば一番いいのですが、簡単にはいかない。だったら、互いに補完し合うという意味で、衆議院中心の旧希望の党と、参議院中心の旧民進党の合流は評価できる。

ただ、約4割の現職議員がこぼれたのは残念です。手続き的に丁寧さに欠けた部分はあったかもしれないけれど、スピード感も重要です。スピード重視か合意の丁寧さ重視かは難しいが、両方を併存させなければなりません。

【塩田】来年の4月に統一地方選挙があり、夏に参院選が控えています。

【馬淵】残り1年を切りました。連合(日本労働組合総連合会)の要望、要求も強まっていくでしょう。各産業別組合が参議院の候補者をどんどん決めていく。政党の公認・推薦に対して、連合が推薦するわけだから、政党が決めないと駄目で、連合側には、のんびりされたら困るという事情があるでしょう。

【塩田】一方、総選挙後の立憲民主党の動き、対応は。

【馬淵】苦労されているのだと思います。政党支持率は野党トップで12~14%くらいありますが、新人議員も多く、野党第一党としての責任を果たしていくことは大変だと思います。

立憲民主党のもう一つの課題は、共産党との関係でしょうね。前回の総選挙では、立憲民主党の候補者がいる選挙区では共産党の候補者を降ろしてもらうという選挙協力がなされました。共産党はそれで票と議席を減らしてしまった。次は、そう簡単にはいかなくなるでしょう。共産党として、次に求めてくるのは「相互推薦」です。立憲民主党の候補がいないところでは、共産党を応援しろということですね。つまり「共産党との一体化」を意味することになる。だから、枝野代表も共産党との距離感については熟慮されていると思います。

立憲民主党の比例復活者の惜敗率を見れば分かりますが、国民民主党と合流するとたちまち次期選挙が厳しくなる可能性が高い。だから、国民民主党と安易には一緒になれない状況なのだと思います。

【塩田】枝野代表のリーダーシップをどう見ていますか。

【馬淵】新党を立党し、リーダーシップを発揮されました。ただ、ここからがしんどいでしょうね。野党合流は比例復活の立憲民主党議員の再選を危うい状況に追い込んでしまうかもしれない。それを覚悟して、大同団結に踏み切ると、小池百合子さんから排除されて追い出された人たちを救ったというヒーロー像、枝野さん自身の存在意義が問われてしまいかねないので、これはできない。再度、共産党と組んだら共産党と一体化が避けられなくなる可能性がある。難しいジレンマに陥っているように見えます。

枝野さんとは、彼が幹事長のとき、私は選対委員長でした。もう一度、政権交代を実現するためには野党をどうまとめていかなければいけないかが、よく分かっている人です。共産党との関係も含めて丁寧にやっていた。小沢一郎さん(元民主党代表)とも、組まなければ、全部をまとめていかなければ、とよく理解して進めていった人です。枝野さんとの間では、しっかりとした信頼関係を構築して仕事に当たることができたと思っています。