昨年10月の総選挙で落選した元民進党選挙対策委員長の馬淵澄夫氏が政治団体「一丸の会」を設立した。先の総選挙の落選者のうち、惜敗率60%以上の44人は次の総選挙で議席を奪い返す可能性があるという。新政治団体設立の狙いをノンフィクション作家の塩田潮氏が聞いた――。(前編、全2回)

惜敗率60%以上の44人は野党躍進の当選候補者

【塩田潮】旧民進党系の前職など、昨年10月の総選挙の落選者を結集した新しい政治団体「一丸の会」を4月2日に設立して代表に就任しました。結成の狙いは。

馬淵澄夫・元民進党選挙対策委員長

【馬淵澄夫・元民進党選挙対策委員長】昨年の総選挙で落選して議席を失いましたが、11月以降、ばらばらの野党をもう一度、まとめるという思いで、希望の党と民進党の合流の手伝いをしてきました。ですが、統一会派の話も今年1月の通常国会の召集前に頓挫してしまった。そのとき、現職の議員のみなさんが一つになるのは難しいと実感した。必死に戦って当選し、それぞれの党派に分かれてしまった人たちは、一国一城の主で、メンツもある。国会対策でもぶつかり合う。恩讐を越えて、という状況になるのは簡単ではないと痛感しました。

しかし、われわれ浪々の身は、そんなことを言っていたら、次の選挙で勝てないと分かっている。浪人は危機感があるけど、現職議員にはない。あっても、乗り越えていくエネルギーがない。それを実感したとき、野党の浪人のわれわれに何ができるかと考えた。

昨年の総選挙では、55議席を取った立憲民主党は前職の15人が全員当選した。無所属で出た前職も19人が当選しています。落選者の圧倒的多数は希望の党で、民進党から転籍させられた人も含めて185人いた。この人たちの次の当落を占う一つのラインは惜敗率です。

70%以上が27人、60%以上が44人いる。私は民進党で選対委員長をやって、過去のデータの分析もやってきた。各候補の個別の事情はありますが、データだけでいえば、惜敗率70%の候補者は次の総選挙で小選挙区での当選確率は5割、惜敗率60%の候補者は比例復活する可能性が6割ある。つまり、次の総選挙で立憲民主党、国民民主党、野党の無所属が数を増やすにはこれら落選者が当選していくことしかないんです。転区を強いられた候補者もいたし、一概に惜敗率だけでは言えませんが、ざくっと捉えれば、惜敗率60%以上の44人は、次の総選挙で野党が伸びるための礎となる大きな塊です。

ところが、いろいろと調べてみると、希望の党で昨年の総選挙を戦い、落選した私たちは、法的には現在、無所属であることが判明しました。希望の党の執行部側は「党員です」と言いましたが、実際は「みなし党員」であり、「公認」という事実も法的に党籍を証明するものではないことが分かりました。また、既存の民進党も立憲民主党にしても、落選者のケアが十分かといえばそうではなかった。みんな、どうしていいか分からない。情報も入ってこないという状況が続きました。

これはいかんと思った。このままでは、心が折れて辞める人まで出てきてしまう、せっかくの「伸びしろ」がボロボロになってしまう、と感じました。つまり、「どの党」ということではなく、「野党が永遠にダメな状況」に陥るのを防がなければ、というのが私の最大の眼目でした。

そこで、まず勉強会を始めました。月に3回でも4回でも、集まれる人は集まって、情報交換しながら励まし合う。やがて「馬淵さん、旗を振ってくれ」という声が出てきました。政党要件は国会議員5人以上だから、政党にはなれない。政治団体で、広くみんなが結集できるエンジンになろうというので、「一丸の会」という名前にして、3月28日に総務省に届け出を済ませたんです。全部で42名です。4月19日に設立総会を開いた。私が代表に選任をされ、大阪の長安豊さん(元衆議院議員)が会計責任者、群馬の宮崎岳志さん(前衆議院議員)が事務局長に選ばれました。