これからの人生100年時代、「60歳で定年退職、65歳まで継続雇用、以降は無職」では豊かな老後は迎えられない。投資ファンドで中小企業の再生を手がけてきた三戸政和氏は、「70歳を過ぎても十分な収入を得るためには、能力や経験を生かして、中小企業を買収し、経営者になるべきだ」という。サラリーマンが中小企業を買収することで得られる「2つの収入」とは――。(第5回)

※本稿は、三戸政和『サラリーマンは300万円で会社を買いなさい』(講談社)の一部を再編集したものです。

当たり前を当たり前に実行する

万年赤字の会社が2年で黒字になり、V字回復したというニュースを耳にすることがあると思います。そんなニュースに接すると、いったいどれだけ高度な経営手法を導入したのかと思うことでしょう。

写真=iStock.com/Bet_Noire

しかし、実際の企業再生においては、外科手術的な対応として、銀行からの借入金を免除してもらうといった一部特殊なものもありますが、内科的な対応(事業面においての改革)は、ほとんどの場合、先に挙げたような当たり前のことの中から、とくにできていなかったもの、赤字の主な要因になっていたものを見つけて、まともなマネジメントモデルをいくつか導入するだけです。

現実はそんなものです。それだけ、高い能力がない人には当たり前のことを当たり前に実行することは難しいのです。

経営資源が揃っていて、市場と売り物が悪くないのに赤字に陥っている企業を少し黒字にすることは、そんなに難しいことではありません。私たち、投資ファンドはそのような先を見つけ投資をするのですが、当然、投資ファンドは慈善団体ではありません。少し手を入れれば、そんなに難しくなく経営を立て直せることがわかっているからこそ、出資するのです。

「業務改善をしようとしても、社員の意識改革が難しいのではないか」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、現場の社員たちは、意外と自分の業務を改善することに前向きだったり、そのためのアイデアを持っていたりします。トップが変化を求めないから、これまで顕在化しなかっただけだったりするのです。

ここに、私たち投資ファンドや、外からやってきた新社長(あなたです)などの「外部の風」が入る意味があるのです。