日産自動車と仏ルノーの経営統合は本当にあるのか。両社を率いるカルロス・ゴーン氏は、ルノーCEOの続投が決まった2月以降、提携関係の見直しについて踏み込んだ発言を繰り返している。背景には、ルノーに15%出資する仏政府が、ゴーン氏の続投をめぐって、ルノー・日産の提携を後戻りできない「不可逆な関係」にすることを求め、それにゴーン氏が同意したものとみられている。日産はこのままルノーにのみ込まれてしまうのか――。
写真=AFP/時事通信フォト

日産・ルノー統合報道がヒートアップした理由

フランス自動車大手ルノーと日産自動車の経営統合が現実味を増している。両社を率いるカルロス・ゴーン氏が仏政府の“お墨付き”を得て、ルノーの最高経営責任者(CEO)の続投が決まり、統合論に火を点けた格好だ。

発端は2月。ルノーの取締役会で、ゴーンCEOの続投が決まったことだった。続投にあたりゴーン氏は、15%出資する筆頭株主の仏政府から、ルノー・日産の提携を後戻りできない「不可逆な関係」にすることを求められ、それに同意したものとみられている。

ゴーン氏はルノー、日産、さらに2016年10月に日産の傘下入りした三菱自動車を加えた日仏3社連合を率いる総帥だ。再任を受け、ゴーン氏は次の任期のミッションとして、中期経営計画の目標達成、自らの後継者育成、そして3社連合を持続可能な体制とすること、という3点を掲げている。特に注目されるのは3社連合の将来であり、「3社連合が不可逆的な関係であることを示したい」との発言がさまざまな観測を生んでいる。

ロイター通信は3月7日、日産が仏政府の保有するルノー株式を買い取る検討に入ったと伝えた。また、ブルームバーグは3月29日、ルノー、日産が合併し、統合後の新会社が株式上場の可能性を協議していると報じた。さらに、日本経済新聞は4月17日付朝刊で、ゴーン氏が両社の資本関係を見直す可能性に言及したとのインタビュー記事を掲載した。一連の報道はまさに、3社連合の今後のアライアンスをめぐり水面下で関係者が腹を探り合っていることを連想させる。

確かなことは、ゴーン氏が3社連合の総帥を退いた後もアライアンスが不変であることを切望している点だ。それを表すのが「不可逆的関係」の発言であり、仏政権が突き付けた続投の条件にも合致する。