6月12日、アメリカ・トランプ大統領と北朝鮮・金正恩朝鮮労働党委員長との間で、史上初の米朝首脳会談が開かれた。会談後の共同声明では、朝鮮半島の非核化を宣言したものの具体的な行動や検証については言及なし。これは日本にとってどういう意味を持つのか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(6月12日配信)より、抜粋記事をお届けします――。
写真=AFP/アフロ

トランプのおっちゃんは知っている! 局面を動かす時こそ政治家・トップの出番だ

トランプのおっちゃんが世界を引っ掻き回している。今回のG7首脳会議では持論を譲らないし、G7での首脳共同宣言についても、米朝首脳会談が行われるシンガポールに発った後に、ツイッターで「俺はG7の共同宣言なんて承認していない」と発信。色々なところから聞いた話では、今回のG7会議はシナリオなしでのガチンコの激論だった模様。

これまでの状況を大きく動かす局面では、シナリオに沿った会議なんて全く無意味なんだよね。シナリオに沿った会議なんて、その会議以前に組織の担当者同士で話は決着しているわけで、それはわざわざトップが動かなくても組織の担当者レベルで解決できる会議であることを物語っている。つまり国の首脳が大きく局面を動かす話ではなく、組織の官僚レベルで解決できる話だからこそ、首脳会議ではシナリオに沿った会議で何とかなるということなんだよね。

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この点、トランプのおっちゃんは、大統領就任後、ワシントンの官僚ではできないことを次々とやっているね。ワシントンの官僚のシナリオ通りにトランプのおっちゃんが動かないことは、もはや世界中に知れ渡っている。もちろんその中身については賛否両論、それもとてつもなく激しい賛否両論が沸き起こっている。それだけ動かそうとしている事態や局面、その変革が大きいということだ。

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北朝鮮問題なんて、これは官僚組織の一担当者が扱えるレベルでないことは誰にも分かる。なんと言っても、まだ朝鮮戦争は継続中なんだよね。今休戦しているだけ。そして北朝鮮という超独裁国家において核兵器が着々と準備されているんだから。

こんな問題を解決するのに官僚組織の一部局、ましてや一官僚が対応できるわけがない。今回の米朝首脳会談については、特に新聞を中心に、出てくるわ出てくるわ、色んなインテリたちが持論を述べていた。でもね、ほとんどのインテリは、自分たちの領域と役割というものを分かっていない。

どの部分を政治家であり、国家のトップであるトランプのおっちゃんが担って、どの部分を専門家である官僚組織やインテリが担うのかの整理が必要で、まずそこをしっかりと整理するのが自称インテリの役割なんだ。トップと組織、政治家と官僚の役割分担論ね。ところが、政治家がやらなければならない領域にまで口を出して、トランプのおっちゃんのやっていることを全否定する自称インテリも多いね。

このように急展開で米朝首脳会談が実現することになったけど、米朝首脳会談が決定するまでは、また決定した後も、会談を行うトランプはバカだ、アホだと偉そうに罵っていた自称インテリが多かった。準備不足だ、戦略欠如だ、ともっともらしいことを言ってね。

でもこんな戦争にもなりかねない大きな問題を解決するのに、国のトップが会談する以外に、どんな方法があるというのか。