「1分で話せないような話は、どんなに長くても伝わらない」。ソフトバンクの孫正義社長に「プレゼンの達人」として認められ、ヤフーアカデミアの学長を務める伊藤羊一さんはそう断言します。それでは短く話すには、なにが必要なのでしょうか。伊藤さんは「データでも感想でもなく、まずは結論を話しましょう」といいます――。

※本稿は、伊藤羊一『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

「てっぺんのないピラミッド」になっていないか

1分で話せない人、頑張って話しているのにさっぱり伝わらない人は、「てっぺんのないピラミッド」になっています。

たとえばよくあるのは、

「Aさんもいいと言っていました」
「お得意さんも喜んでいました」
「実際に数字も上がっています、以上」

で終わる人。聞いている人は、「で?」ってなります。

ロジカルシンキングを多少なりとも勉強した方は、ピラミッドストラクチャーを学んだ方も多いと思います。

初めて聞く方のために簡単に説明すると、話には結論と根拠があり、その結論を一番上に、根拠をその下に並べたものです。根拠は複数あることが多いので、三角形、つまり、ピラミッドのような形をしているので、「ピラミッドストラクチャー」といいます。

データや事実を伝えられても「で?」となってしまう

次の2つの言葉を見比べてください。

【A】
この商品はお客さんが絶賛していました。
販売店も受注に前向きです。
実際に数字も上がっています。
【B】
この商品は増産すべきではないでしょうか。

Aの人は、ピラミッドでいう「根拠」だけがあり、結論がありません。

「Aさんがいいと言っていた」「数字が上がっている」など事例やデータをいくら重ねても、相手はこのデータや事実から、何を読み取ればいいのかまったくわかりません。だから、「で?」となってしまうんです。

逆にいえば、このピラミッドがしっかり組めれば、話が長くなったり、伝わらなかったりすることはなくなります。

「これが結論です」
「理由はAでBでCだからです」
「わかった、了解」

これだけです。

「1分で考えよ」の根幹はここにあります。まず伝えようとすることの骨組み、つまり、結論と根拠のセットを構築します。これができれば驚くほど説得力を増す伝え方ができます。

そのキーワードは「ピラミッドでロジカルにストーリーを考えよう」。

「ロジカルに考える」と書くと難しそうですが、そんなことはありません。意味がつながっていればロジカル、それだけでかまいません。型にはめて、「ロジカルに」考える癖をつけましょう。これができれば、確実に説得力が増す話をすることができるようになります。