人工知能(AI)の進化で、作業が効率化されるといわれる分野の1つが「医療」だ。東京大学の研究者がつくった画像診断ソフトは、ガンや脳疾患などを9割の精度で発見し、診断を助けるという。「生物×IT」で世界のパイオニアになると語る、若者に見える世界とは──。

がんや脳疾患を9割の精度で発見するソフトウエア

【田原】島原さんは画像解析のビジネスをやってらっしゃる。基本から教えてください。画像解析って何ですか?

【島原】顕微鏡で細胞を観察するとします。昔は「形がおかしくなった」とか「暗くなった」というように、細胞の様子を定性的に記述してきました。しかし、2000年以降に画像のデジタル化が進んだ結果、膨大な量の画像データを解析して、様子を計量的に表現することが容易になりました。たとえば昔は「形が変わった」と感覚的に言っていたのを、「複雑度が20%増した」と表現できるようになった。このようにコンピュータを使って画像データを処理することを画像解析といいます。

【田原】その技術で具体的に何を?

【島原】病気を発見するソフトウエアをつくれます。たとえばガンを発見するソフトをつくるとすると、まず実際のガン患者さんの病変部の画像をコンピュータに学習させます。新たにほかの患者さんの画像を見せたときに、過去の画像と特徴が一致していたら、その患者さんもガンだとわかります。いままでは医師が診断していましたが、やはり人間がやることなので、見過ごしや誤診のリスクはありました。そこに画像解析ソフトの支援を加えることで、より精度が高く、なおかつ効率的な診断が期待できます。

【田原】最初にコンピュータに教える画像が間違っていたら、機械も間違えますよね?

【島原】おっしゃるとおりです。最初に学習させるデータを「教師ありデータ」といいますが、同じ画像でも、医師によって「ガンだ」「いや、ガンではない」と判断が分かれる場合があって、最初の教師ありデータが間違っている可能性はあります。そのリスクを減らすために、私たちは経験豊富な医師2~3人によるダブルチェック、トリプルチェックで教師ありデータを作成しています。