グーグルの創業者ラリー・ペイジは2002年、「なぜいまさらウェブ検索サービスを始めるのか」という問いに対し、「本当はAIを作っている」と答えたという。グーグルがAIを重要視しているように、現在のインターネットの先にあるのは、人間とコンピューターの融合だ。ジャーナリストの服部桂氏はマーシャル・マクルーハンの議論を紹介しながら、「インターネット全体が自然をも支配する第2の環境になっていく」と予想する――。

※本稿は、服部桂『マクルーハンはメッセージ メディアとテクノロジーの未来はどこへ向かうのか?』(イースト・プレス)の第4章「21世紀のマクルーハン」を再編集したものです。

インターネットの先の未来

さて、電子メディアの最先端に位置する現在のインターネットと呼ばれるものの先にある、未来はどんなものになるのだろうか?

写真=iStock.com/metamorworks

マーシャル・マクルーハンは著書『メディア論』(1964年)の最終章「オートメーション」で、「電気時代のもっとも顕著な特徴は、われわれの中枢神経組織に極めてよく似た、全地球規模のネットワークが確立することである。われわれの中枢神経組織は電気的ネットワークであるばかりでなく、経験が一つに統一された場である」と言っているが、その言葉はまさにいまのインターネットを論じているようにも読める。

そして、「われわれ中枢神経系を電磁気技術へと拡張し、翻訳したあとでは、われわれの意識をコンピューターの世界へ移すことは、その次にくる段階にすぎない」とも述べている。

コンピューターの限界と人間の役割

さらに未来のコンピューターの役割について、「情報検索とは関係がなくなるだろう。それは純粋な発見と関係するだろう」と言い、コンピューターが記憶を自由に検索したり操ったりすることを可能にすることによって、「普通の知覚とはまったく異質の新しい神話的構造的意味を帯びるようになり」、「われ知らず神話的なもの、パターン、構造、プロフィールについての知識を明らかにする」とその効用を説く。

未来のメディアは、「環境の共同体的内容として意識を加工する。そしてついには、補聴器くらいの大きさのポータブルコンピュータへとつながるかもしれない。それは現在夢が行っているように共同体的経験を通じて個人的経験を加工するだろう」とも言っている。

メディアは人間の意識を拡張するためのテクノロジーだと考えるマクルーハンにとって、人間の中枢神経としての脳を人工的に模したコンピューターと、それらを有機的につないだインターネットこそ究極のメディアだろう。だが、コンピューターは効率よく人間が苦手な仕事をこなしてはくれるが、「意味を理解するということに関しては人間の独壇場だ」と、その限界と人間の役割について指摘もしている。