プレジデント誌の好評連載「悩み事の出口」。ライフネット生命の創業者で、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが、読者の悩みに答えます。今回のお題は「残業禁止になりました」。出口さんは「脳のメカニズムを知り、自ら『働き方改革』を」といいます――。

Q:残業禁止になり、密度が濃くて疲れます

――消費財メーカーの新規事業部で企画を考えています。残業禁止で早く帰れるようになったのですが、脳が疲れて仕事が終わるとクタクタです。

疲れて当然です。

写真=iStock.com/PeopleImages

僕も講演会の終了後、お客さまに感想を聞くと時々「1時間半があっという間でした。もっとお話が聞きたい」と言ってもらえることがあります。それで「では次回は同じテーマで5時間ぶっ続けで話します。また来てもらえますか?」と聞いてみる。すると相手は「5時間ですか? いや、ちょっと……」と躊躇します。

なぜだかわかりますか?

――ありがたみがなくなるのでしょうか?

長時間になると集中力がもたなくなるのです。人間の脳の重さは全体重の2%にも満たないのに、エネルギーは20%以上も使っている。ものすごく高性能なので、エンジンが焼き切れるんです。これはいろいろな学者が証明しています。

人の話を一生懸命聞くときは、脳をフル回転させているわけです。それは2時間が限度。だから多くの映画は2時間になっているでしょう。

一方、単純労働は長時間できますよ。ネジを巻くだけとかであれば、条件反射ですから脳をあまり使いません。