世界の金融市場が元に戻ることはない

<strong>オリックス会長・グループCEO 宮内義彦</strong><br>1935年、兵庫県生まれ。58年関西学院大学卒業。60年ワシントン大学大学院でMBA取得。日綿實業(現・双日)入社。64年、オリエント・リース(現・オリックス)入社。代表取締役社長を経て、2000年代表取締役会長就任。03年より現職。
オリックス会長・グループCEO 宮内義彦
1935年、兵庫県生まれ。58年関西学院大学卒業。60年ワシントン大学大学院でMBA取得。日綿實業(現・双日)入社。64年、オリエント・リース(現・オリックス)入社。代表取締役社長を経て、2000年代表取締役会長就任。03年より現職。

今、世界経済には大嵐が吹いています。そもそも実物経済の裏側にあって経済活動をサポートするのが金融ですが、1990年代以降の米国経済は、大きく膨らんだ金融が実物経済を引っ張っていくという反対の構造になっていました。

過大となりすぎた金融が破綻すると、実物経済まで動かなくなってしまった。米国経済の急ブレーキを受けて、日本を含む世界中の経済活動に深刻な影響が出ているというのが「大嵐」の正体です。

金融市場の機能を回復させ、元のようにお金を動かすにはどうしたらいいか。そのことを各国の政府や金融当局が苦心惨憺しながら検討し、さまざまな対策を打っているというのが現状です。とりわけ米国を中心とした欧米の政府や民間人は、なんとか現在の異常な状況を脱し、危機以前の“ノーマルな”姿へ戻したい、という強い願望を抱いています。

しかし、現実は彼らの願う方向には動いていかないでしょう。「完全に元どおりになる」ということは、歴史的に見てもありえないことだと思います。

では、この大嵐が過ぎ去ったあとはどんな世界がやってくるのでしょうか。確実なことは「変わる」ということです。たとえば、日本経済は「輸出立国」のままでいいのか。

米国という大消費国があるからこそ成り立つのが輸出立国という考え方です。しかし、需要が一気に3割も減少するような今回の急ブレーキを経験した以上、日本企業が今後も米国市場に依存するような戦略を取り続けるかというと、そうはならないと思います。一度怖い目を見せられたら、「あそこは危ないぞ」と警戒するのが自然だからです。