防衛省が「すでに破棄した」としていた自衛隊イラク派遣時の活動報告(日報)が見つかった。435日分の日報を通読した防衛ジャーナリストの芦川淳氏は「少数精鋭が孤軍奮闘するなかでの出来事を、自然な筆致でつづっている。自衛隊の内部だけでなく、現地の生の情報を広く伝えようとした内容だ」と評価する。隊員たちは何を伝えようとしたのか――。
イラク南部のサマワ市郊外で、復興支援活動の一つとして道路補修工事を行う陸上自衛隊員(2004年、時事=写真)

見つかったのは「個人的保存分」が大半か

防衛省が存在を否定していた自衛隊イラク派遣時の活動報告(日報)が、改めての調査で発見され、同省は4月16日にこれを公開した。公開されたのは、陸上自衛隊が保管していた計435日分(計1万4929ページ)で、一部に抜けはあるが、2004年1月の派遣初期から2006年9月の撤収時までの大部分をカバーする。全文を通読して感じたのは、この日報を公開するにあたって生じたマンパワーの重みと、意外とほのぼのとした当時の現地情勢だ。

一般的に近年の日報は、現地からネット経由で送信されるため、ほとんどの場合はプレゼンテーションソフトのデータとして保存される。無いとされた日報のオリジナルデータは、行政文書管理規則に則って実際に削除されたようだが、今回、発見されたデータは、派遣活動の参考資料としてコピーされた後に、個人の公用PCに残されたものと思われる。日報自体は、秘密度の低い「注意文書」にあたり、部内の多くの人間が閲覧できるようになっていたので、職務上の資料としてコピーしたとしても不思議ではない。

マンパワーの無駄遣い?

問題は、そのデータのファイル名が別名に変更され、個人PCの奥深い階層や外部メディアに保存された場合だ。ネットワークから切り離されていたり、データを保存したメディアがどこかに紛れ込んだりすれば、該当ファイルを探し出すことは非常に困難である。作業はしらみつぶしの要領となり、人海戦術で探すために大きなマンパワーを割く必要がある。