後に「あれが財務省解体のきっかけだった」といわれるかもしれない。福田淳一・財務次官のセクハラ発言報道で、「週刊新潮」が底力を見せつけた。かつて財務省の前身である大蔵省も、週刊誌報道で解体に追い込まれた。当時、「ノーパンしゃぶしゃぶ接待」を追いかけていた元「週刊現代」編集長の元木昌彦氏が振り返る――。
2018年4月20日、財務省の福田淳一事務次官のセクハラ疑惑に抗議するため、同省に向かう野党議員の一団(写真=時事通信フォト)

「ちょっと僕のクルマ、最近ガタがきててね」でいい

「首吊るような人は事務次官にはなれない」

これは大蔵省に不祥事が続発して、逮捕者や自殺者が大量に出た直後の1998年に出された、テリー伊藤による大蔵官僚匿名インタビュー『大蔵官僚の復讐』(飛鳥新社)に出てくる大蔵省キャリアの言葉である。

事務次官というのは中央省庁では「位人臣を極めたお方」という。次官になる、ならないは、「天皇になるのか、市井の人で終わるのかぐらいの差がある」(同じキャリア)ようだ。

当時の大手銀行にはMOF担と呼ばれる中堅幹部たちがいた。大蔵省との折衝や情報収集にあたるのだが、一番の役割は、彼らを接待して賄賂をばらまくことだった。

先の本で、キャリアがこう語っている。

「MOF担の仕事というのは、キャリアの趣味、生活パターンをつかむことが第一で、キャリアは『僕、オペラが好きでねえ』。これだけでいいわけですから。(中略)それは自動車でも同じで、『ちょっと僕のクルマ、最近ガタがきててね』だけでいいわけだから」

5000円ほど払うとスカートの中が見える仕掛け

大蔵省の「護送船団方式」に乗っていれば、何の心配もいらなかった時代が続いた。だが、地価の異常な高騰や株価の上昇で膨らみ過ぎたバブル景気は、大蔵省の不動産融資の総量規制に端を発して、弾けてしまう。

国民の血税を住専の不良債権処理に投じるなど、批判が高まっていったが、それでも大蔵省の接待漬け、収賄体質は変わらなかった。

だが、国民の怒りは、銀行によるキャリアたちへの「ノーパンしゃぶしゃぶ」接待が、週刊誌で暴かれたことで一気に火を噴いたのである。有名だったのは歌舞伎町にあった会員制しゃぶしゃぶ「楼蘭」という店だったと記憶している。

ここには多くの若い女性がミニスカートにノーパン姿でいて、5000円ほど払うと、天井からつるされたボトルから酒を注いでくれたりする時に、スカートの中が見えるという仕掛けだった。

性的サービスがあるわけではないが、気に入った女の子がいると、MOF担に頼めば、お膳立てをしてくれたとも聞いていた。ここは表向き飲食店なので、領収書が出ることも、MOF担が使いやすかった理由である。