コンビニへフライドチキンを買いに行ったのに、売り切れていた。そんな経験はないだろうか。この「機会ロス」は顧客に強い悪印象を与える。食べ物の恨みは怖いのだ。セブンイレブン最年少取締役、ファミリーマート商品本部長を歴任した本多利範氏は「そんな事態が2回続けば、お客様はその店に来なくなってしまうだろう」という――。

※本稿は、本多利範『売れる化』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「在庫を切らすな」と言うのは簡単だが……

以前、寒い時期の夜の9時にコンビニを訪れたら、おでんの具が3種類しかないことがありました。一緒にいた人はおでんを食べたがってコンビニに向かったのですが、食べたい具材がなかったので、何も買わずに店を出ました。

写真=iStock.com/sanmai

これが機会ロスです。

では、なぜこの時間におでんがなかったのか検証してみましょう。「在庫を切らすな」と言うのは簡単ですが、在庫が切れてしまう理由をしっかり理解していなければ、また同じことが起こってしまいます。

1つ目に考えられる理由としては、発注数の問題があります。この店ではきちんと在庫切れにならないよう、人気の具を十分な量持ち、調理していたのでしょうか。この責任はおでんの発注担当者にあります。

2つ目の理由として考えられるのは、業務分担に問題があったのではないかという点です。この時間帯、店にはアルバイトが2人いました。しかし尋ねてみると、おでんの補充をするよう指示は受けていなかったということでした。これはアルバイトの業務分担を管理する店長の責任です。

「おでんの品切れ」は、この日ばかりではない

3つ目の理由としては、このような状態を放置していたオーナー、店長、本部から派遣されるSV(スーパーバイザー)の連携の問題です。おそらくこの店で、おでんが品切れになっていたのは、この日ばかりではないでしょう。

毎日商品がちゃんと店に届いているのか、発注量は適正かどうか、在庫がきちんと補充されているか、アルバイトにもそれらをチェックする役目を与えているか、それらのきめ細かい対応がされて初めて、店に商品は並び、売り上げに結びつきます。私たちはそのことを深く考えなくてはなりません。

しかし、客の立場に立つと、今述べたような問題はすべてあずかり知らぬことです。

おでんを食べたい時に、十分な具がない。

事実はそれで十分です。どうして在庫が切れていたのか、誰にその責任があるのかなど、お客様にとってはどうでもいいことであり、「この店はおでんも満足に用意できない店である」という印象がすべてなのです。

「本来あるべきものがなかった」というお客様の失望感を、挽回するチャンスはなかなか訪れません。くれぐれも注意をすべき課題でしょう。