いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、マネーに関する6つのテーマを解説した。第5回は「居酒屋の支払い」について――。(全6回)

店と外国人とのトラブルも発生している

最近はお通しやサービス料を取らないことをウリにする店も増えた。

たかがお通し代、されどお通し代である。チェーン系居酒屋などで出てくるお通し。その多くが有料で300~500円が相場。頼んでないのに出てくるし、前日の「残り物」感いっぱいの品も珍しくはない。訪日外国人旅行客が増えている昨今、海外のチップとは異なる日本の商習慣である「お通し代」を巡り、店と外国人とのトラブルも発生しているという。

お通し代に法的な根拠はあるのか? お通しの提供を断ったり、代金の支払いを拒むことはできるのか。理崎智英弁護士に尋ねた。

「ケース・バイ・ケースです。お通しがある旨を入店時に店員から説明されたり、店前の看板・メニューなどに見やすく記載されていれば、代金は支払わなければなりません。了解のうえで入店したとみなされ、お通しの提供について店と“契約”が成立するからです」

民法で言う「契約」が成立するには、「申込みと承諾」が必要だ。居酒屋などの飲食店では客が注文(申込み)をして、店側がそれを「承りました」と返し、飲食物を提供することで取引が成立する。

「電話予約時やウェブ予約などで事前にお通しの説明・告知等があれば、入店と同時にお通しを注文したことになります。でも、事前の説明・告知がなければ契約成立の条件が整っていないので、お通しが出てきても提供を拒否できますし、代金支払いも拒めます」(同)

理崎氏は学生時代に居酒屋に行ったとき、「お金に余裕がなかったので、いつもお通しカットを店側に伝えていた」と言う。最近は外国人客に「説明が難しい」ため、「お通しカットOK」の店や「お通しのない店」も増えている。