人類が行う「最後の発明」とは一体なにか

英国の数学者アラン・チューリングは、歴史上最高の天才の1人である。

現代のコンピュータの原型は、チューリングが考案した。今、私たちが使っているコンピュータは、すべて「チューリング・マシン」というチューリングの考え方にもとづいている。

映画「2001年宇宙の旅」には宇宙船を制御する人工知能HALが登場する。(AFLO=写真)

以前は知る人ぞ知る存在だったが、ベネディクト・カンバーバッチがチューリング役をつとめた映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でその生涯を知ったという人も多いかもしれない。

そのチューリングが、第2次世界大戦中にドイツの暗号「エニグマ」を解読するプロジェクトに携わっていたとき、同僚だった数学者の1人が、アービング・グッドだった。

才能というのは集まるものなのかもしれない。グッドも、チューリングとは別の意味で、現代の私たちに大きな影響を与える考え方を残した。それが、「知能爆発」の概念である。

グッドが、「知能爆発」の基本的な考え方を述べた論文を発表したのは、1965年のこと。

将来、自分自身を繰り返し改良できるコンピュータができるのではないかとグッドは考えた。1度そのようなコンピュータができると、勝手に自分自身を改良することでその知能が成長し、やがて「爆発」的に賢くなる。この「知能爆発」により、もはや新たな技術開発の必要がなくなる。

自分自身を改良できるコンピュータをつくることが、人類が行う「最後の発明」であるとグッドは考えた。そのようなコンピュータをつくると、後は勝手に自分を改良して高度な文明をつくりあげるから、人間はもはや何をする必要もなくなるのだと。