1973年の石油ショック前以来という空前の人手不足の中、熾烈な人材争奪戦が展開されている。年収アップを勝ち取り活躍できるのはどんな人か、最新の情報を知る転職情報サイト編集長などのプロフェッショナルたちに聞いた――。

20代、30代、40代 転職で年収が上がる人の条件

「年功的賃金の本体では採用が難しいので、別会社をつくって、年収2000万~3000万円で若いAIエンジニアや半導体技術者を採用している大手企業もあります」

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こう語るのは転職情報サイトの「リクナビNEXT」の藤井薫編集長だ。年収5000万円を提示する中国系企業もあり、日本の大手もなりふり構ってはいられない状況だ。大手の中には給与をめぐる正社員間の軋轢を避けるため、契約社員にして高額の年俸を支払う企業も少なくない。

需要が高いのはテクノロジー系の人材に限らない。あらゆる職種で求人が殺到している。正社員の求人数を登録者数で割った2月の転職求人倍率は1.80倍(リクルートキャリア調べ)。職種別の求人数は前月比で34職種中19職種が増加。登録者数も29職種が増加し、うち24職種は過去最高となっている。転職者数は2013年の287万人から17年は311万人に増加している(総務省「労働力調査結果」)。

しかも35歳転職限界説が崩壊して久しいが、40歳以上の転職者も増加している。人材紹介業大手のJACリクルートメントの黒澤敏浩フェローは「40代の増加はもちろん、50代の転職決定者が13年から17年の間に4.2倍に増え、全体の1割を占めている」と語る。

転職求人倍率職種のトップは「インターネット専門職」(Webエンジニア含む)の5.66倍、続いて「組込・制御ソフトウエア開発エンジニア」の4.77倍、建設エンジニアの4.22倍だ。インターネット専門職は「IT企業に限らず小売業などウェブを販売ツールに使う多くの企業が欲しがり、組込・制御ソフトウエア開発はAI技術やIoTも含めて機械にソフトを組み込む電機・自動車などのメーカーが最も欲しがる職種で、ともにITエンジニア。1人を約6社が取り合っているイメージです」(藤井編集長)。

ITエンジニアは最低でも600万円

当然、転職後の年収も高い。黒澤氏は「ITエンジニアはとにかく給与をたくさん出すので欲しいという企業が多い。技術レベルによるが最低でも600万円。年齢に関係なく上限は2000万円ぐらい。正社員として最初から高い年収で入るとプレッシャーもあるので、入社時に一時金として100万円を出す企業もある」と語る。

だが、あらゆる職種が売り手市場にあるとはいえ、前職より高い年収で転職できる人は多くはない。黒澤氏は「景気がよいので転職しやすくなっているが、収益に直結する一部の高い専門性を持つ人を除いて、給与が同じか下がるのが普通だ。現在の会社でそれなりに貢献していても他の会社に移ると環境が変わるので当初は貢献度が下がるために給与を下げて入るのが一般的」と指摘する。