子供を「上流ロード」に乗せるには、なにが有効なのか。「プレジデント」(2017年2月13日号)では、子育てをめぐる13のテーマについて識者にアドバイスを求めました。第2回のテーマは「人間力」です――。

「まずは学力が優先だ」は本当か

わが子にリーダーシップを身に付けさせたいが、それは社会に出てからでも遅くない、まずは学力が優先だ、と考えている人は多いかもしれません。

リーダーシップのような能力は、IQや学力で数値化できる「認知能力」と区別して、「非認知能力」と呼ばれます。ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大のジェームズ・ヘックマンらの研究では、非認知能力を高めるような投資は、なるべく子どもの学齢が小さいうちに行うことが効果的であることを指摘しています。

また、自制心や勤勉性などの非認知能力が学力などの認知能力を改善することは示されていますが、その逆――認知能力が非認知能力を改善するというエビデンスはありません。その意味では、就学前に取り組むなら、スポーツなどリーダーシップを含む非認知能力を鍛えられる分野がよいかもしれません。

労働経済学や教育経済学の分野で非認知能力に注目が集まるのは学校を卒業した後の生産性や賃金に影響するという実証研究が出てきているからです。これには2つの経路があり、1つは非認知能力が認知能力を高めることを通じて、賃金や生産性に影響を及ぼすという経路。もう1つは非認知能力が直接、賃金や生産性に影響を与えるという経路です。

これまでの研究を見る限り、リーダーシップは後者の経路を通じて、賃金や生産性に影響するものと考えられます。