高校の運動部で「丸刈り」にする選手が増えている。高校野球では90年代に5割から3割に減ったが、現在では8割ほどに増えている。高校駅伝でも6割のチームが丸刈りで、このトレンドはほかのスポーツにも広がっている。なぜなのか――。

なぜ高校野球部員の丸刈り率が増しているのか?

「春の甲子園」が始まった。高校球児たちのキビキビとした動きを見て、身が引き締まる思いをしている人は少なくないだろう。真っ白なユニフォームが土で汚れても、彼らの“さわやか感”がなくなることはない。

なぜだろうか?

その大きな理由は、球児たちの若さと“頭”にあると筆者はにらんでいる。ご存じの通り、甲子園球児に長髪はいないからだ。大半の選手たちが丸刈りで、ハツラツとプレーしている。

実は高校スポーツにおける丸刈りは、野球部だけのものではない。サッカーやバスケットボール、バレーボールの全国大会でも、かなりの選手が丸刈りにしている。

筆者が毎年取材をしている全国高校駅伝でも男子チームの“丸刈り率”は高い。筆者が高校時代だった20数年前から、その光景はほとんど変わらないなと感じ、ちょっと調べてみた。すると、驚くべき結果が出た。

▼「高校駅伝」も20年前より丸刈りが増えていた
※写真はイメージです(写真=iStock.com/yngsa)

“丸刈りチーム”の数は変わらないどころか、むしろ増えているのだ。昨年12月の全国高校駅伝出場校で部員全員が丸刈りにしていると思われるチームは全47校中29校。一方、20年前の1997年大会は21校だった。集合写真で確認したため判別しにくいチームもあったが、筆者が数える限り、当時より現在のほうが多いという結果だったのだ。

さらに調べてみると、野球部の丸刈り率もアップしていることがわかった。日本高校野球連盟と朝日新聞社は1993年から5年に一度、全国の加盟校(約4000校)を対象に、頭髪の実態調査をしている。初めて調査した1993年は丸刈りの学校が51%で、1998年に31%にまで減少。ところが、2000年代に入ると03年46%、08年69%と増加し、13年には79%となっている。

90年代に丸刈り率が下がった理由は、93年にサッカーJリーグの開幕などがあり、自由なヘアスタイルに憧れる高校生が増えたからだと思われる。それが一転、2000年代で丸刈り復権となったのは、なぜだろうか。

さまざまなスポーツでトレーナーを務める知人が、ある強豪校野球部のコーチに聞くと、「丸刈りにしないと他校から笑われるんですよ。だから選手たちが自主的に丸刈りにしています」という答えが返ってきたという。野球部では丸刈りのチームでないと練習試合を断られることもあるそうだ。