若い頃の趣味を続けるのは楽しいことです。しかし趣味を広く深く追求すると、「俺はオタクだ」「私はサブカルだ」といった意識が強まり、趣味の縮小が難しくなります。楽しみだったはずの趣味に人生を束縛され、後半生で苦しむ人もいます。精神科医の熊代亨氏は、「いつまでも第一線の愛好家であり続けようとせず、手抜きを認めることが大切だ」といいます――。

※本稿は、熊代亨『「若者」をやめて、「大人」を始める「成熟困難時代」をどう生きるか?』(イースト・プレス)の第7章「趣味とともに生きていくということ」を再編集したものです。

何歳までコスプレをし続けていられるか

長くサブカルチャーの愛好家を続けているうちに、避けられない問題に直面することがあります。

熊代亨『「若者」をやめて、「大人」を始める「成熟困難時代」をどう生きるか?』(イースト・プレス)

わかりやすいところでは、キャラクターのコスプレを楽しんでいる人は、一体何歳までコスプレを趣味にし続けられるでしょうか。若い女性キャラクターのコスプレを専らにしている女性などは、自分の年齢が若いキャラクターから離れていくことや、自分の社会的立場が変わっていくことと、コスプレ趣味をどうやって折り合いづけていくのか、いずれ考えなければならなくなるでしょう。

そこまで極端な例でなくても、自分が30代、40代と年を取るにつれて、主人公が10代のアニメやライトノベルを楽しむために必要な読み方が変わってきます。20代のうちはまだ、学生服を着た主人公への感情移入もそれほど難しくありませんが、学生時代から長い年月がたち、おじさんやおばさんになるにつれて、学生服を着た主人公への感情移入は難しくなります。

加齢に合わせた楽しみ方の軌道修正

年を取ってもアニメやライトノベルを楽しみ続けるためには、自分自身が留年や再入学を繰り返すなどして身も心も学生気分のままであり続けるか、そもそも感情移入に頼らず、遠い世界の物語として眺める習慣を身に付けておかなければなりません。

また、動体視力や反射神経を極度に必要とするゲームのたぐいも、年齢が変わると身体的についていけなくなり、新発売のゲームにキャッチアップしていくことが難しくなっていきます。スポーツにも言えることですが、加齢による身体の変化にあわせて楽しみ方を軌道修正していかないと、自分がやりたいプレイが思うようにできなくていらだったり、心身を故障させてしまったりするおそれが高まります。

では、加齢にあわせてどうやって軌道修正していけば良いのでしょうか。

いちばん簡単な方法は、自分が若かった頃に好きだったコンテンツや、その続編シリーズだけを追いかけていくことです。