世間を賑わす「新しい経済」その正体

580億円相当の仮想通貨が流出、フィンテックでスマホ決済が拡大――。世間を賑わす「新しい経済」。その正体を本書では解き明かす。

著者は個人の時間を売買できる「タイムバンク」というサービスを立ち上げたメタップスの創業者。「お金」がなかった幼少期の体験から、お金や資本主義について考え続けた。

佐藤航陽(さとう・かつあき)
福島県生まれ。早稲田大学在学中にメタップスを設立。11年にアプリ収益化支援事業を開始、世界8拠点に事業を拡大。13年に決済サービスを立ち上げる。15年に東証マザーズ上場。17年に時間を売買する「タイムバンク」を立ち上げる。

「お金やお金に関する言葉を、私たちは意味を把握せず、曖昧なままに使っています。だから『そもそも価値って何?』とか、一つひとつを分解し、言語化していった。そうした因数分解の繰り返しの中で経済システムとは何かを読み解いていきました」

経済システムというと遠いように思うかもしれないが、言い換えればそれは「ものごとが上手く回る仕組み」。実態を把握することで、組織運営やマネジメントなどあらゆる生産活動に置き換えて応用できる。

「経済システムの研究を重ねてわかったのが『よくできた企業やサービスの共通点は、個人に依存せず仕組みで動く』ということ。会社組織にしても仮想通貨と同じで、管理者がいなくても、そこで働く社員が勝手に考えて勝手に動いている状態が理想です。だから私が社員に指示したり、注意したりするのであれば、それはシステムが甘い証拠。システムの設計者はその一部に組み込まれることなく、システムを俯瞰してチューニングするべきです」

最も重要なのは「インセンティブ」の設計

では組織が仕組みだけで回るには何が必要なのか。

「最も重要なのは『インセンティブ』の設計。相手が欲しいものは何かをわからなければ正しいマネジメントはできません。しかし給与が欲しいと言っていても、実は褒めてほしいという場合がある。人間は口で話すことと本来欲しいものがズレることがあるので、言葉ではなく行動から欲求を探らなければなりません。たとえば外見に非常にこだわっていれば、この人はモテたいんだなと見ていく」

適切なインセンティブ設計のうえで、システムを永く続けるために必要なのが「理念」や「美学」の共有になる。

「会社組織は利害を共にする共同体でありながらも足の引っ張り合いなどの競争が起こる。ただ社員間で同じ思想や価値観を共有できていれば、着地点を見つけやすい。逆に、共通認識のない組織は短命だと言えます」

(撮影=小野田陽一)
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