「ルール」や「常識」に従ったままでいいのでしょうか。人間関係に気をつかって「お人よし」を演じていれば、心はどんどん疲弊していきます。エッセイストで講演家の潮凪洋介氏は、「『他人のことを思いやっている』という几帳面な人ほど、身勝手な行動で迷惑をかけている」と説きます――。

「いい人」は自分流を身勝手に行使する「了見が狭い人」

どこにでもいる「いい人」の行動原則は「他人に迷惑をかけない」ということです。他人に対して軽々に頼みごとはしません。たとえ些細な頼みごとであったとしても、頼まれた人にとっては迷惑かもしれないと考えるのです。

「いい人」は仕事においても同様の発想をしますから、誰にも頼らずに自分1人の力で仕事の成果を出そうとします。この独立独歩、自己責任の精神は大切なことですが、ある一定の仕事量、そして責任の大きさを超えると、これがかえって仇となります。

潮凪洋介(原著)、うげっぱ(著)『漫画 もう「いい人」になるのはやめなさい!』(KADOKAWA)

キャパを超える仕事を抱え込み、持ち前の責任感でこなそうとすると、まず、心身に支障をきたします。心身に支障をきたすと仕事の速度は遅くなり、また、仕事の質も落ちますが、「いい人」は他人に頼ることを避けるので、やがて仕事はストップします。ここまでくると、ストップした仕事は他の誰かが引き受けざるを得ませんから、結局、周囲に大きな迷惑をかけることになります。

誤解を恐れずに言うなら、このタイプの「いい人」は、自分が勝手に設定した「ルール」や「常識」を身勝手に行使する「了見が狭い人」です。本人は「他人のことを思いやって行動している自分を了見が狭いとは失礼千万」と感じるでしょうが、最終的に周囲に迷惑をかけているのであれば、本質的には「いい人」でないのは明らかです。

正当な理由のない「申し訳ない」は封印せよ

周囲に迷惑をかけず、与えられた仕事をこなそうとするのなら、まず、自分のキャパを正しく把握する必要があります。そして、キャパを超える分は別の人に振り分ける算段をすることです。同僚に協力してもらうのもいいでしょう。上司に相談して、自分が担当する仕事の量をキャパの範囲内に抑えてもらうのもいいでしょう。

大切なのは、いずれの場合でも、相手に「申し訳ない」と言わないことです。「ありがとう」と言うのはいいのです。本来、自分が抱え込もうとしていた仕事を引き受けてくれる相手に対して、感謝するのは当然でしょう。しかし、自分が悪いわけではないので、「申し訳ない」と言う必要はまったくないのです。

「いい人」は、自分のことよりも相手のことを優先して考えることによって、自己防衛しようとします。相手を優先しなかった場合、相手から攻撃されるのではないかと恐れるのです。つまり、「いい人」は卑屈になりがちです。卑屈になると、謝罪する必然性がない場合でも「申し訳ない」と言ってしまいます。

理由もなく「申し訳ない」と言うのは、惨めなことと認識してください。プライドを持って生きたほうが、仕事も恋愛も人生も、うまくいきます。プライドを持つための第一歩として、正当な理由のない「申し訳ない」は封印しましょう。