昨年、訪日客数は2869万人と過去最高を記録した。さらなる増加を目指し、政府は「2020年4000万人」という目標を掲げる。だが、こうした勢いは東京五輪以後も続くのだろうか。日本の観光業が取り組むべき課題とは何なのか。JTBの田川博己会長に聞いた――。

毎年400万人増が続けば、目標達成は可能

――2017年の1年間に日本を訪れた訪日外国人旅行者数は、前年比19.3%増の2869万人で過去最高を記録しました。政府は「2020年4000万人」という目標を掲げています。達成は可能でしょうか。

田川博己・JTB会長

「間違いなく達成できる」という確信が、1年前に比べると強くなりました。昨年度は前年比で465万人増。20年までに毎年400万人増が続くと想定すれば、4000万人は達成できる数字だと思います。

購買力も期待できます。「爆買い」がなくなって減ったという人がいますが、買い物の仕方が変わっただけ。小売店でも百貨店の業績は順調です。

今はインバウンドも団体旅行からFIT(Foreign Independent Tour:海外個人旅行)に変わりつつあります。日本政府観光局(JNTO)の調査では、中国からの観光客もFITが5割を超えています。今年はますます東南アジア旅行客もFIT化して、買い物も集団ではなく、自分の買いたいものを買いに行くようになります。

最近の外国人観光客の購買行動を見てみると、家電や化粧品の買い物だけではなく、サービスやエンターテインメントを楽しむ「コト消費」に移っています。しかし、これに関しては日本でデータ化された数字がまだありません。カードの利用額はわかっても、「何に、いくら使ったのか」がわかるような「消費のビッグデータ」はまだありません。ただし、JTB総合研究所の調査を見ると、旅行の個人化は進んでいます。例えば、東南アジアの女性観光客の間では日本の美容室やネイルサロンが人気になっています。

――個人旅行増加はリピーターが増えているということですか。

それは間違いありません。日本人が50年前から海外旅行をするようになり、だんだん大衆化しFIT化したのが90年代の終わり。この2000年代に入って18年間、ほぼFIT化しました。それと同じようなことが、中国やアジアからの旅行客に起きています。