自民党右派は日本を「核保有国」にしたい

施政方針演説で改憲論議の前進を訴えた安倍晋三首相。先の総選挙で改憲勢力の3分の2議席を確保した安倍政権が憲法改正の発議まで持っていけるかどうか、今国会の注目ポイントの1つとされる。施政方針演説では触れなかったが、安倍政権が目指している憲法改正は憲法9条に第3項を加え、そこに自衛隊を明記することだ。

戦後日本の国防はアメリカの占領統治というトラウマの中から出発した。日本はGHQから平和憲法を与えられて、2度と世界を相手に戦争を仕掛けないように、野心を持たないように、いわば去勢された。アメリカの都合で警察予備隊から保安隊、自衛隊と組織改編して“戦力”を持つことを許されたが、サンフランシスコ講和条約を締結して主権回復後も日米安保条約と地位協定に基づいて米軍の駐留は継続し、沖縄に世界最大規模の駐留地を構えて、依然として4万~5万人の米軍人が日本にいるわけだ。

北朝鮮の朝鮮人民軍創建70周年の軍事パレード(平壌、2月8日)。(AFLO=写真)

戦後70年で日本は経済的な大国にはなったけれど、軍事的には「普通の国」にもなっていない。中曽根康弘元首相や安倍首相に連なる自民党右派は、日本を軍隊のある「普通の国」にしたいし、核保有国になりたいのだ。

自民党の憲法改正草案では9条は書き換えて、2項に「国防軍」の規定を新設することになっている。だから「災害派遣その他で国民の皆さんのために頑張っている自衛隊が日陰者のように扱われるのは可哀想(だから憲法に明記しましょう)」と国民感情に訴えても、改憲の壁を乗り越えるための方便にしか聞こえない。

私は『新・国富論』『平成維新』『君は憲法第8章を読んだか』などの著作でゼロベースでの創憲論を展開してきた。だから安倍首相が憲法改正を正面から提起したことについては評価している。70年間、一字一句変更されていない憲法を時代に合った形に変えるのは当然のことだ。

「平和憲法を守れ」という護憲派のほうがよほど理解できない。現行憲法のどこに平和が保証されているのか。日本は憲法9条を守ってきたから平和だったわけではない。戦後70年にわたり日本の平和が維持されてきたのは、アメリカの強大な軍事力と核の傘に守られてきたからだ。

永世中立国のスイスは一見、平和国家のイメージがあるが、彼の国は男子国民皆兵で、アルプスの山の中はミサイルだらけ。いざとなったらどこの国にも撃ち込めるようになっている。要するに防衛力、抑止力によって平和を維持しているわけで、憲法で平和が守れるというのは呪文に神力が宿ると信じる空想的平和主義でしかない。