死亡すると本人名義の預金口座は凍結され、お金を引き出せなくなる。だが「認知症」でも同じように口座凍結される場合がある。有料老人ホームの入居費用を本人の口座から支払えない、ということもあり得る。トラブルを避けるためにはどうすればいいのか――。

親が認知症になると、親名義の預金を子供でも引き出せない

エッセイストの鳥居りんこさんは、約10年間、母親を介護された経験をお持ちです。そのうち在宅が6年間、有料老人ホームが4年間だったそうです。私は約3カ月、父親を介護した経験がありますが、約10年間の介護というのは想像を超える長さです。

鳥居りんこさんの新刊『親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(ダイヤモンド・ビッグ社)

鳥居さんはその介護経緯を新著『親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(ダイヤモンド・ビッグ社)にまとめ、より多くの人が知っておくべき「介護にかかわる事実」を紹介しています。

その筆頭が、「認知症になると、家族であっても預金を引き出せなくなる」ということです。恥ずかしながら、私はこの事実を知りませんでした。

「死亡した人の銀行口座は凍結される」ということは多くの方がご存じだと思います。人が亡くなれば、葬儀代、お寺へのお布施や戒名代などの費用がかかります。大きな金額ですから家族としても本人の預金で賄いたいところです。

しかし、通帳やキャッシュカードがみつかっても、暗証番号がわからなければ、預金は引き出せません。ここで、つい銀行の窓口に相談したくなりますが、そうすればいきなり「アウト」なのです。

▼銀行は名義人の死を知った時点でその口座を凍結

銀行は、名義人の死を知った時点でその口座を凍結します。親族間の相続トラブルに巻き込まれることを避けるためです。口座が凍結されれば家族といえども預金を引き出すことはできません。ポイントは「銀行に連絡がいくかどうか」。役所に死亡届を出しても、すぐ口座が凍結されるわけではありません。なぜなら原則として役所から銀行に連絡することはないからです。

なお、他界した親が加入している生命保険は、死亡したことを伝えても「凍結」されることはなく、保険金は請求後1週間ほどで振り込まれるので当面の支払いに充てられます。ただ、保険に入っていない場合は大変です。親族間で相談するなどし、費用を分担するなり誰かが立て替えるなりするしかありません。

この「死亡による口座凍結」と同様のことが、「名義人が認知症になったとき」にも適用されることがあるのです。認知症の進行具合によって判断はわかれるようですが、口座凍結となれば大変です。鳥居さんは著書でこんなエピソードを紹介しています。

《周囲の負担が大きいため、本人の同意のもとで在宅介護から有料老人ホームに切り替えることになった、入所費用を母親の定期預金で賄おうとしたが、銀行が母親を認知症だと認めれば、口座凍結されてしまう。母親と銀行に出向いたところ、銀行の担当者は、母親の認知症を疑っているのか、誕生日を聞いたり書類に住所氏名を書かせたりする。鳥居さんはいつもの認知症状が出ないかヒヤヒヤするが、その時の母親は頑張ってなんとかその難関をクリアする》