「夫婦別財布」と「夫婦でひとつの財布」、お金が貯まるのはどちらでしょうか。「ひとつの財布」のほうが効率的だと、夫婦のどちらかに家計管理を丸投げすると、貯まるどころか、浪費が加速してしまうこともあります。なぜなのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏が実例を紹介します――。

貯められない「別財布」の夫婦は「1つの財布」でもダメだった

●家族構成(4人家族)
会社員のTさん(40)/妻(Mさん・フルタイム会社員・38)/長男(小3)、長女(5歳)
●手取り収入(月) 55万円(夫35万円 妻20万円)
●貯蓄 200万円


「インターネットでマネー記事を読み、わが家も家計を『夫婦でひとつ』にしてみたのですがなかなかうまくいかず、予定通りお金がたまらないんです」

写真=iStock.com/minhee park

浮かない顔で相談にきたのはTさんご夫婦(夫40歳、妻38歳)。聞けば、半年前までは「夫婦別財布」で、互いにいくら収入があって、いくら使っているのかしっかり把握していませんでした。

その結果、手取り月収が2人合わせて約56万円もあるのに、なかなか貯金ができずに困っていたそうです。そんな折、本欄の記事「共働き家計“パワハラ退職”で完全に傾く 貯められない『別財布』の落とし穴」(http://president.jp/articles/-/22717)を読み、自分たちも「夫婦でひとつの財布」で出直そうと決心したといいます。

▼家計管理は「妻に任せて一切口を出さない」

プランはこうです。

毎月の生活費はすべて夫のTさんの月収約35万円でまかなう。そして妻のMさんの月収約20万円は全額貯金に回す。極めて、シンプルです。家族は長男長女を含めて4人。マイホームのローン支払いが月11万円ありますが、35万円あればやりくりは可能なはず。妻の20万円は毎月着実に貯めて子供の将来の教育費にしよう。そう考えたのです。

それ以来、毎月の給料からTさんは自分のこづかい5万円を引いた30万円を妻のMさんにそっくりそのまま渡しました。Mさんは費目ごとに予算を決め、その中でやりくりするようにしました。やる気になっている妻を見て、Tさんは思いました。「信頼して妻に任せよう」と。「つい細かいことにまで口を出してしまう」という自分の性格を考え、家計費のやりくりは妻に一任。それが、「夫婦でひとつの財布」を成功させるコツなのではないかと感じたと言います。だから毎月の収支や貯金額も、いちいち聞くことはなかったそうです。

そうして半年が経過した頃……。