日本企業は利益に貢献しない製品をつくりすぎている。だが製品の種類を絞り込めば、営業現場は反対する。競合企業に「棚を明け渡す」ことになるからだ。どうすればいいのか。同志社大学の加登豊教授は、「どうせ棚に入るのは他社の売れない商品だから問題はない」という。「多品種少量生産」の呪縛を解く6つの対応策を紹介しよう――。(後編、全2回)

(1)断捨離ルールを適用する(儲からない製品から廃番にする)

製品品種を絞り込む最も有効な方法は、整理整頓にヒントがある。「断捨離」のルールを適用するのである。具体的には、「製品品種を1つ増やす時には、既存品種5つを廃番とする」ことが推奨される。

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会議に関しては、「1つ増やすなら、2つ廃止すべきだ」とすでに指摘した。しかし、会議の増殖以上に、品種の増加は深刻であり、「1増2減」では間に合わない。際限のない多品種化に歯止めをかけるには、「1増5減」でも不十分かもしれない。収益への貢献が期待される製品(収益性は、限界利益や売上高総利益ではなく、販売費・一般管理費も計算に入れた営業利益で判断する)を追加し、企業の収益を圧迫している製品を5つ廃番にすれば、企業収益は向上し、製品品種の削減もできるのである。

「いつか売れる」「私たちには供給責任がある」などが、廃番を阻止する典型的な言い訳だろう。これらの主張に対しては、「自社の利益を削る方策を支持することは、企業で働く者にとっていかがなものだろう」と反論すればいいだろう。企業の究極目標は、長期継続的な利益の獲得にあるのだから。

(2)製品コードが際限なく増加しないシステム設計とする

企業の基幹情報システムは、将来に備えて柔軟な対処できるように設計されている。製品が増えても、それに対応できるように製品コードの増加が容易に行われるようになっているはずである。このことが、多品種少量生産へのチェックを甘くしている。

製品種類数の推移は、必ず毎月経営陣がチェックを行うとともに、現場レベルで新しい製品コード付けを制限することが必要である。そのためには、新しい製品コードの生成が承認なしに行われないように、情報システムの機能制限を行うと良い。やや強引だが、システムで処理できる製品種類数を強制的に削減するとよい。

(3)正しい原価計算を行う、計算に経営判断を盛り込まない

製造間接費の製品別への帰属を行う配賦(割り振り)計算を実施する場合、ほとんどすべての企業が操業度関連の配賦基準を利用しているであろう。このような計算が、少量生産品の製造間接費負担を軽くし、見かけ上の高い利益貢献をもたらしていることは前編(売れないポテチの種類が増えつづける理由)ですでに述べた。

操業度関連の基準を用いて製造間接費の製品別帰属を行うことは即座に中止し、製造間接費の管理手法として有効なABC(Activity-based costing)活動基準原価計算の採用に踏み切ることが強く推奨される(ABCについては、原価計算の教科書を参照されたい)。正しい原価計算を実施すればわかることだが、製品戦略を抜本的に見直さなければならないことに気がつくだろう。合わせて、製品種類別収益性分析を徹底的に行う必要がある。