プレジデント誌の好評連載「悩み事の出口」。ライフネット生命の創業者で、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが、読者の悩みに答えます。今回のお題は「仕事のしすぎ」。出口さんは「『今日もやってやろう』と思えるかどうかが鍵です」といいます――。

Q:ガンガン仕事をしすぎて自滅することも。ちょうどいい仕事量とは?

――疲れがたまっています。働きすぎなのでしょうか……。
写真=iStock.com/Peopleimages

今朝起きたとき「今日も元気だ。よし、やったるで」という気持ちになりましたか? 朝起きたときの気分が「ナイロメーター」です。

――ナイロメーター?

ええ。ナイロメーターとはエジプトのナイル川の氾濫に備えて設置された、水位を測定する施設を言います。

――水(疲れ)が堤防から溢れ出るようなら、もうちょっと抑えたほうがいいってことですか。

そうです。朝起きたとき何か辛くて、仕事をしたくないと思えばtoo muchです。サステイナブルでなければ、いい仕事はできません。20代、30代は、たまに無理もきくとは思いますが。

――この前、「2日間、徹夜をしても平気だった」と上司が得意そうに言っていました。

徹夜して仕事が終わった後、「充実感があった」などと言う人がいます。でも、それがどういう現象か、すでに脳科学者が研究済みですよ。

徹夜をしたり、無理をしたりすると、脳が自分を守るために、モルヒネによく似た「幸せホルモン」を放出するのです。そのホルモンに騙されて、「ああ、俺は頑張った」と気分が高揚するだけで、仕事の生産性は一切上がっていません。無駄な努力です。