面倒なことを押しつける、人のせいにする、すぐにキレる……。「プレジデント」2月10日発売号、特集「ウソが平気な人、悪口好きな人」では、会社にも家庭にもいる「迷惑で困った人」の対処法を紹介します。今回はその迷惑で困った人側ではなく、「迷惑をかけられて、振り回される人側」に立った記事から、担当編集者がポイントを紹介します。

「会社には2種類の人間しかいない。人を振り回す人と、人に振り回される人だ」

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これは、ある有名企業に勤める友人の言葉です。彼女は、真面目で優秀。良識があり気も利くため、会社では上司、同僚、後輩と、さまざまな人たちから頼りにされています。しかし、自分のことを「私は、人に振り回される側の人間」と呼び、始終お疲れ模様。端からみると、「あんなにデキる人なのに、そんな働き方をしているなんてもったいない」と感じます。同時に「彼女は悪くないのに、都合良くこき使うなんてひどい!」と、彼女を振り回す会社の人たちに憤りを覚えます。この状況を改善することはできないのでしょうか。

精神科医の片田珠美先生は、次のように解説します。

「状況を改善しようとして上司や先輩の言動が変わるように働きかけても、それはムダ。なぜならば、人間は18歳を過ぎる頃から性格が固まり始めて、余程のことがない限り、本質的には変わらなくなってしまうからです。振り回されている人は、自分自身を変える努力をしなくてはいけません」
「振り回す人に支配される人を『イネイブラー(enabler)』と呼びます。直訳すると『~できるようにする人』。振り回す人の問題行動を助長する身近な人のことを指します。もちろん、一番悪いのは振り回す人ですが、振り回されている人は、振り回す人が『少々のことは許される』と思い込む状況をつくってしまっているのです」
自分が上司から怒られるのは、自分の不手際や能力不足のせいだと思い込んでいる。また、上司に対して萎縮していて、波風を立てたくないという願望も強い。このような意識が、相手の振り回し度合いをヒートアップさせている可能性がある。

そう、友人は謙虚すぎるほど「いい人」で、我が身を削ってでも「尽くす人」。片田先生のいう「イネイブラー」に当てはまりそうです。そのような「いい人」ほど、他人を都合よく使おうとする人に目を付けられるとは、ちょっと悲しい気持ちになります。しかし、「一番悪いのは振り回す人ですが」と前置きしながらも、片田先生からは厳しい指摘が続きます。