人の記憶に残るスピーチと残らないスピーチ。人に感銘を与えるスピーチと与えないスピーチ。それぞれ、どこが違うのか。ポイントは、テーマ選択とストーリー構成にある。そして最後の決め手は、練習量だ。スティーブ・ジョブズはわずか5分のスピーチのリハーサルに、丸2日をかけたという。

スピーチが得意な人は、コツを知っている

朝礼、納会、仕事始め、株主総会、地元経済団体での挨拶、結婚式の来賓挨拶など、経営者や経営幹部になると、スピーチをする機会は増える。スピーチで聞き手が感銘し、記憶に残る話ができる人は非常にかぎられる。その理由は、話しの上手下手ではなく、話す内容が記憶に残らず、人に感銘を与えないテーマ選択とストーリー構成にある。

「沈黙は金」(注)とする考えが長く続いたせいか、日本人は多くを語らないことが美徳とされ、学校ではスピーチの教科はなく、人前で話をする訓練をすることはなかった。他方、欧米では経営者はもとより、リーダーになる人たちにはスピーチ力が要求され、教育を受ける機会もあり、スピーチで語られた内容が国や企業を牽引する力になってきた。

話し手が聞き手の心をつかみ、感動させ、記憶に残るスピーチの条件と何か。

(注)イギリスの思想家で歴史家でもあるトーマス・カーライルの『衣装哲学』にある言葉で、「Speech is silver, silence is golden.」から引用された。よどみなく話すことも大事だが、黙るべきときを知ることはさらに大切だという意味。