どれだけ論理的に物事を考えられる人でも、「話し方」に問題があればチャンスを逃してしまう。「プレジデント」(2017年12月18日号)では、6つの場面別に「相手が気持ちよくなる言い方」を紹介しています。第1回のテーマは「飛び込みで営業」です――。

1年通い続けて、ようやく面会がかなう

私は2007年の入社以来10年間、東京本店で、アパートやマンションなどの建設を手がける集合住宅事業部の営業を担当してきました。

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当部署には半期に1度、営業成績の上位者を表彰する「マイスター表彰」制度があって、私は入社から通算20期中、11期で表彰されました。また、マイスター表彰を5期連続以上受賞すると「ロイヤルマイスター」というもう一段上の表彰制度もあり、私は11年上期~13年下期の6期連続でマイスターとなって、その表彰を受けました。一般職で同表彰を受けたのは、私が初めてでした。

賃貸住宅の営業は、お客さまなどからの紹介営業とともに、飛び込み営業が重要になります。といっても、闇雲に飛び込むわけではありません。当社では事前に土地の所有者や、その土地が賃貸住宅事業に適しているかどうかを調べる「適地管理」を徹底しており、そうした所有者さまを直接訪問します。

でもお客さまから見たら、ある日突然、見ず知らずの営業担当がやってくるわけですから、飛び込み営業そのものです。だから、初回で面会していただくのは非常に難しい。特に都心部では、インターホン越しに断られることがほとんどです。そこで個人宅の場合は曜日や時間帯を変えながら何度も訪問し、名刺や資料を置くなどして、会ってもらえるように努力していきます。

入社して最初に賃貸マンションを建てていただいたお客さまは当時85歳の男性の方で、何度ご訪問してもけんもほろろで、まったく相手にしてもらえません。途中で心が折れそうになりながらも、通い続けました。そうして1年経ったころ、ご子息からお電話を頂戴しました。所有地の活用の決定権が、ご子息に移るタイミングだったのです。

実は、複数のライバル会社も営業に来ていたのですが、そのつど、置いていった名刺は私のものも含めて捨てられていました。そして、最後に1枚だけ残っていたのが私の名刺だったそうです。そのお客さまの家は大きく、玄関だけでなく裏口のポストなどに、合計で数え切れないくらい名刺を投函していたことが功を奏したのでしょう。