アマゾンジャパンの存在感が年々高まっている。ヤマト運輸との配送問題、AIスピーカーの発売、金融分野への進出……。これからアマゾンはどこに向かおうとしているのか。日本進出翌年から社長を務めるジャスパー・チャン氏に、田原総一朗氏が直撃した――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年1月29日号)の掲載記事を再編集したものです。

ヤマト運輸の配送問題。どうなりました?

――アマゾンは最初、書籍販売のみでしたね。いまは取り扱う商品が増えた。

【チャン】私たちのミッションは、「地球上で最も豊富な品揃え」を実現すること。そのためには、オンライン上で求められるあらゆるものを探し、発見でき、購入できる場をつくること。もともと書籍にかぎるつもりはなく、それ以外のCDやDVDといったメディア、さらにファッション、ヘルス&ビューティー、その他消費者製品へと段階的に広げていきました。

――品揃えは日本独自? アメリカの本社と相談するのですか?

【チャン】ミッションや戦略はグローバル企業として同じものを掲げています。ただ、お客様に提供するサービスの内容や品揃えは各国で考えて決めています。実際、私たちが扱うほとんどの製品は日本のメーカーがつくったもの。私たちにとって大きなビジネスであるアマゾンマーケットプレイスでも、日本の販売事業者がさまざまな商品を出品しています。お客様にどうすればベストなサービスを提供できるかを、日本の人たちとともに考えています。

――「アマゾンプライム」は配送料無料などの特典が人気。会員数や売り上げはどれくらいですか?

【チャン】開示していませんが、大勢の方にご利用いただいています。

――アマゾンプライムで配達される商品は何種類あるんですか?

【チャン】現在は全世界で数千万種類以上あります。

――たくさん売れるのは素晴らしい。一方でラストワンマイル問題が起きて宅配業者が悲鳴をあげています。この問題、どうします?

【チャン】まず考えたいのが、これはアマゾンだけの問題ではないということ。オンラインショッピングはまずアメリカで、次にヨーロッパで成長しました。これらの地域でも、Eコマースの需要の伸びに従ってラストワンマイルのキャパシティを増やすことが求められるようになりました。いま同じことが日本でも起こりつつあります。それに対して、私たちは配送会社を1社に限定せず、複数の会社と協力して、その中でベストなソリューションを提供していきます。

――アマゾンがヤマトに代わる配送会社をつくったらどうですか。

【チャン】ソリューションは1つではありません。アメリカやヨーロッパの一部ではアマゾンに配送部門があります。自社のプロセスの効率化を進めたり、新たなテクノロジーを組み合わせることも必要で、さまざまなソリューションが考えられます。ただ、いまのところは複数の配送会社と組むことで対応するとしかいえません。

ヤマト配送問題
ネット通販拡大を受けて宅配ドライバーの労働環境が悪化。人手不足が深刻化した。宅配便最大手のヤマト運輸は、17年10月に個人向け料金を値上げ。大口顧客に対しても値上げ交渉を進めている。