日本人の大便の量が激減しています。大便は単なる「食べ物のカス」ではありません。食べ物のカスは約5%で、固形部分の大半は「腸内細菌」の死骸。つまり腸内細菌が減っているのです。その結果、腸に穴があいて、下痢になる人が増えています。その原因は周囲にあふれる「抗菌グッズ」にあるのです――。(第2回)

※本稿は、藤田紘一郎『手を洗いすぎてはいけない』(光文社新書)の第4章「マスク大好き日本人の愚」を再編集したものです。

腸内細菌が激減すると大便の量も激減する

私たちの腸には、およそ200種類100兆個もの腸内細菌がすんでいます。重さでいえば、およそ2キログラムにもなります。

その腸内細菌は、腸粘膜細胞と協働して、人が生きるために必要な多くの仕事を行っています。主な腸内細菌の働きは、以下のとおりです。

・食べ物の消化、吸収、便の形成
・免疫機能の維持
・有害物質の排除
・ビタミンの合成
・必須アミノ酸の合成
・ホルモンの合成
・脳内伝達物質の合成
・酵素の合成
・腸の蠕動運動の促進

このように、腸内細菌の働きは、生命活動そのものに直結しています。

ところが今、困ったことが起こってきています。

現代を生きる私たちの腸内細菌が、かつての日本人より明らかに数が減ってきてしまっているのです。

藤田紘一郎『手を洗いすぎてはいけない』(光文社新書)

それは、大便の量を見るとわかります。大便は単なる「食べ物のカス」ではありません。約60パーセントが水分、約20パーセントが腸内細菌とその死がい、約15パーセントが腸からはがれ落ちた粘膜細胞の死がい、約5パーセントが食べたもののカスという具合に構成されています。つまり固形部分の大半は腸内細菌なのです。

ですから、大便が小さいということは、腸内細菌の数が少ないことを表します。色が黒かったり、コロコロだったり、硬すぎたり、水っぽかったりなど、大便の状態がよくない場合は、善玉菌が少なく、悪玉菌が増えすぎているなど、腸内バランスが乱れ、腸内フローラが貧弱化していることを示しています。

若い女性の便から、非常に強いにおい

では、かつての日本人はどのくらい立派な大便をしていたのでしょうか。

こんなエピソードが残されています。太平洋戦争のさなか、日本軍の野営地あとを米軍の兵士が偵察に来ました。そこには大量の大便があり、それを見た米軍兵士はこんな大軍と戦ったら大変なことになる、と逃げ出したといいます。ところが実際の日本軍は、米軍が推察した人数にまったく満たなかったということです。

戦前の日本人の大便は、平均して約400グラムもの重さがあったと推計されています。約400グラムとは、バナナ4本分です。ところが現在では、よい人でも約200グラム程度、少ない人では150グラムほどしかありません。

以前、お菓子ばかり食べていて、自炊をほとんどしないという若い女性の大便を調べさせてもらったことがあります。重さはわずか80グラムほどしかなく、非常に強いにおいを放っていました。悪玉菌が異常繁殖し、腸内細菌の数が少ないという最悪の状態だったのです。