2017年の欧州経済は予想以上に堅調だった。だが18年は政治リスクの台頭が懸念されている。最大の懸念はトルコとEUの関係だ。関係がこじれれば、大量のシリア難民がふたたび流入し、各国は財政負担や政治不安に見舞われることになる。欧州は難民に対して、どう対応すればいいのか――。
▼2018年を読む3つのポイント
・欧州の政治リスクは2017年半ばに後退したとみられたものの、足元では再び懸念が高まっている。
・ユーロ圏主要国はそれぞれ異なる政治リスクを抱えており、不安定な状況にある。
・政治リスクの火種となった難民問題は未解決であり、欧州統合の遠心力に作用。また、トルコとの関係悪化により、難民の大量流入が再発する恐れも。

政治リスクが再び台頭

2018年の欧州経済は内外需要に支えられて、回復基調が続く公算が大きい。しかし、経済が政治に翻弄される構図は基本的に変わらないと予想される。

まず、この1~2年の動きを簡単に振り返ってみよう、2017年の欧州経済は、予想以上に堅調な回復が続いた。その一方で、政治情勢に一喜一憂させられる年となった。16年には英国国民投票でEU離脱派が勝利、米国のトランプ大統領誕生といった政治的な番狂わせが起こった。

こうした出来事がポピュリズム政党を勢いづけるなか、ドイツやフランスといった複数の主要国で選挙が予定されていたため、年初には反EU勢力の躍進によるEU崩壊のシナリオが現実味を帯びつつあった。もっとも、17年3月のオランダ総選挙では与党が第1党を維持し、続く4,5月のフランス大統領選では親EUのマクロン大統領が誕生。懸念されていたEU崩壊のリスクは後退し、一時は安堵感が広まった(図表1)。ところが、昨秋のドイツやオーストリアの選挙で、反EU、反移民を主張する政党が躍進するなど、再び政治リスクへの懸念が高まってきた。

こうした政治を巡る不透明感は、18年以降も企業や消費者の経済活動にマイナス影響を与えることにもなりかねない。とりわけ、(1)ユーロ圏の中心国がそろって政治リスクを抱えていること、(2)欧州政治リスクの元凶である難民問題が未解決であること、の2つが懸念材料である。

独メルケル首相の指導力に陰り

まず、ドイツについてみると、強いリーダーシップを発揮し、同国のみならず、欧州全体を主導してきたメルケル首相の指導力に陰りがみられる。

2017年9月のドイツ総選挙では、メルケル首相率いるCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)が第1党を維持したものの、移民排斥を訴える極右政党「ドイツのための選択肢」や、旧東ドイツの独裁政党の流れをひく極左政党「左翼党」が躍進し、合わせて議席の2割を獲得した。議席を大きく減らしたメルケル首相は、FDP(自由民主党)と緑の党との3党連立を模索したものの、移民や環境などの分野で政策面の隔たりが大きく、11月に連立交渉が決裂した。