だれにも「相性の悪い相手」はいます。どのように対応すればいいのでしょうか。「ニューズウィーク日本版」の「世界が尊敬する日本人100人」にも選出された僧侶の枡野俊明氏は、「必要なのは、『相手を変えようとしない』というスタンス」「どうにもならないことは放っておけばいい」と説きます――。

誰もが知らないうちに相手を変えようとしている

人間関係には、相手に対してとるべき基本的なスタンスがあるように思います。結論を先にいえば、「相手を変えようとしない」ということ。このスタンスをしっかり踏まえていないと、関係がうまく続くことはないでしょう。

「そんなこと、わかっています。相手を変えようなんて思っていません」

おそらく、あなたはそう言いたいはずです。ところが、実際には随所で変えようとしているのです。たとえば、こんな会話をしたことはありませんか?

「うちの課長、もう少し部下に仕事をまかせてくれないかな。いちいち口うるさくて、やりづらいですよね」

「まったくですね。部下を信頼するのも上司の仕事だと私は思うのですが……」

何にでも自分がかかわりたがる上司はいるものです。それが部下の仕事をやりにくくしているということも、実際にあるのでしょう。ですから、いまあげたような会話も飛び交うことになります。

枡野俊明『近すぎず、遠すぎず。 他人に振り回されない人付き合いの極意』(KADOKAWA)

変えようと思うからギクシャクする

ここで考えてみてください。「部下に仕事をまかせてくれないかな」というのは、上司を「仕事をまかせてくれる人」に変えようとしているのではありませんか。少なくとも、変わってほしいと思っているわけです。

しかし、どんなに自分が願っても、望んでも、他人を変えることはできません。そのできないことをしようとするから、ギクシャクした人間関係になってしまうのです。

このケースでいえば、上司を信頼しなくなる、指示を聞かないようになる、仕事で手を抜き始める……といったことが起こるかもしれません。どれもが上司との関係を悪化させる要素でしょう。では、その根本的な原因は何でしょうか。

答えは、上司に変わってほしいと望んだことであり、つまりは「変えようとした」ことではありませんか。