日本製品の半額以下で、同等以上のクオリティ。「中国製ラブドール」が劇的な進化を遂げている。高品質なだけでなく、株式上場で資金を集め、AIを搭載したアンドロイドの開発も進行中。用途もラブドール以外に広がりつつある。なにが起きているのか。中国・大連で創業者を直撃した――。

業界初の株式上場は中国ベンチャー

2017年8月18日、中国のベンチャー市場「新三板」に、「ラブドール」を制作する企業が株式上場を果たした。その名は大連蒂艾斯科技発展股フン有限公司(英語名「EXDOLL」)。業界では初の株式上場という。これまでオリエント工業などの日本メーカーが業界をリードしていたが、中国ではEX社が市場を席巻しつつある。

EXDOLLのウェブサイト。直感的に情報を探せるサイトづくりがなされている。中国語で「クリスマスはラブドールを買おう!」と書いてある。

人気の理由は「低価格で高品質」というまっとうなものだ。EX製品は高級モデルでも1万~2.5万元(約17万~43万円)程度で、日本のオリエント工業の製品(60万円台後半)と比較すればかなり安い。だが、写真をみてもらえばわかるように、その品質は日本製に匹敵するほど高い。ウェブサイトもあか抜けており、ラブドールの製造元とは思えないスタイリッシュなものになっている。

私はEX社の大連本社と工場に突撃して、雑誌『SAPIO』(12月号、小学館)に現地リポートを寄稿した。取材の結果、EX社はただのラブドール企業ではなく、大きな可能性を秘めたハイテク企業であることがわかった。人形の造形技術をベースに、AIを組み込んだ可動性アンドロイドの開発を進めており、すでにベンチャーキャピタルから1000万元(約1億5000万円)規模の資金を調達していたのだ。

このハイテク企業の創業者はどんな人物なのか。現地リポートではじゅうぶんに紹介できなかったので、今回はCEOの楊東岳氏へのインタビューをお届けしたい。楊氏は現在34歳。かつては日本の大学で電子工学を学ぶ中国人留学生だった。なぜラブドールを商材に起業することになったのか。そこには日本が取りこぼしている「成長産業の可能性」が秘められている。