2017年は3つの技術に注目が集まった。対話型のスマートスピーカー、廉価で高性能なVR機器、そしてAIの急速な進化だ。これらの流行は18年も続くのだろうか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「情報通信テクノロジーは常に、インプットと計算、そしてアウトプットという3つのプロセスから成立してきた。ただの流行では終わらない」と解説する――。

スマートスピーカーが持つ本当の意味

2017年に起きた情報通信テクノロジーの3つの出来事から、近未来のトレンドを考えてみたい。その3つとは、スマートスピーカーの発売、廉価で高性能なVR(仮想現実)/AR(拡張現実)機器の発表、そしてAI(人工知能)の急速な進化である。

まずスマートスピーカーからスタートしよう。この分野の代表的な製品であるアマゾンの「アマゾンエコー(Amazon Echo)」が11月、ついに日本でも発売された。アマゾンの製品としては、電子書籍リーダー「Kindle」を超える過去最大のヒット商品になっていると言われている。

アマゾンエコーによって生活は便利になる?(編集部撮影)

スマートスピーカーは普通の外部スピーカーとしても使えるが、それだけではなく、音声でさまざまな指示を行えるのが特徴だ。ニュースや天気を読んでもらったり、音楽のストリーミングサービスと連携して好みの音楽を鳴らしたり、さらには簡単な会話も楽しめる。

「アレクサ!」でできること

アマゾンエコーの音声認識機能は「アレクサ(Alexa)」という名称で呼ばれている。「アレクサ」の最大の強みは、API(ソフトウェアの一部を公開し、他者が利用できるようにすること)を経由して、アマゾン以外の外部の企業も音声認識を使えるようになっていることだ。たとえば自宅のリビングルームに設置したアマゾンエコーを経由して、室内の照明をオンオフしたり、自宅のガレージのドアを開閉したり、自動車のエンジンを起動したり、タクシーを呼んだりといったことが行える。

さらにアレクサはアマゾンエコーだけでなく、自動車などさまざまな外部の機器にも実装されている。アマゾンのアレクササーバが中心にあって、アマゾンエコー、自動車、自宅、ガレージ、各種の家電、外部のタクシーサービスなど、さまざまな機器・サービスがネットを経由して接続されてぶら下がっているイメージだ。アレクサのいる場所ならどこからでも音声で命令することができ、アレクサのつながっている機器すべてに指示を出せる。