2019年、ラグビーワールドカップが日本で開催される。前回大会で日本代表が強豪の南アフリカを破ったことで、ラグビーの人気も高まりつつある。だが日本人のプロ選手はまだ少ない。なぜなのか。東芝の元社長で、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の岡村正会長に、イーオンの三宅義和社長が聞いた――。(後編、全2回)

ラグビーで本当に必要な英語力とは

【三宅義和・イーオン社長】スポーツのグローバル化は、個人競技にしても団体競技にしてもますます進んでいくはずです。当然、海外での試合も多くなります。すると、やはり日本語だけでは通用しない状況も起きることでしょう。

前回のラグビーワールドカップでの話ですが、日本代表チームの主将を務められたリーチマイケルさんが帰国直前に囲み取材のなかで、「日本代表のキャプテンは英語がわからないと苦労する。レフリーとのコミュニケーションは英語ができる人がいい」と話されたことは、英語教育界でも大きな話題になりました。岡村会長から見られて、試合のどのようなシチュエーションで、どの程度の英語力が必要なのでしょうか。

岡村正・日本ラグビーフットボール協会会長

【岡村正・日本ラグビーフットボール協会会長】4つの場合が考えられます。1つ目は、チーム内のコミュニケーションをどうとるかという話。これだけチームが国際化してきますと、外国人がチームの主力メンバーになる。すると、日本人と彼らとの意思疎通ができなければ、作戦の統一もままなりません。

2つ目として、いまのリーチキャプテンの話のように、レフリーとのコミュニケーションの問題があります。それから3つ目は、対戦相手選手とのコミュニケーション。これは試合中に限ったことではなく、試合後のアフターマッチファンクションでの相手選手との会話、あるいは、友人としての付き合いも含まれます。

4つ目は、試合後の共同並びに単独でのインタビューです。各国のメディアを通して試合の面白さをいかに伝えるかという役割を有名選手は担わなければなりません。

このうち、レフリーとのやり取りについて付言しますと、ラグビーという競技も、一定のルールに従ってレフリーが判断をしながら試合を進めていくわけですが、他のスポーツと比べてルールブックが意外なほど薄いのです。

【三宅】そうなのですか。

【岡村】ということは、反則行為のジャッジに関しても、レフリーの主観がかなり入るわけです。それは、レフリーが恣意的に試合を動かすということではありません。例えば、ハイタックルという行為があった場合、それが偶然なのか、意図的なのかは審判の判断にゆだねられるということです。

【三宅】なるほど。

【岡村】ハイタックルをした選手が、「あれはたまたま自分が手を高く上げたときに、相手がそこに突っ込んできたんだ」と言ってしまえば、それはハイタックルではないということになるわけですが、レフリーが「意図的に首を狙った」と判断すれば反則となります。その際、キャプテンはジャッジについて質問は許されます。それによって、レフリー判断の根拠はわかるので、次からは同じプレーはしないようにチームの仲間に注意を促すことができます。