火事の焼け跡に行くと、意外なものが散乱しているという。

消化液は食品添加物の一種で人体にも無害。「東急ハンズ」などで取り扱い中。天ぷら火災用もある。

消化液は食品添加物の一種で人体にも無害。「東急ハンズ」などで取り扱い中。天ぷら火災用もある。

「実は、消火器なんですよ」と語るのは、消火用具メーカーの株式会社ボネックス代表取締役の苅谷公司さん。「火を消したい、助けてあげたいという気持ちがあっても、慌てて消火器を使うことができない人たちが、とりあえず玄関に投げ入れるようです」。

どんなに慌てて混乱しても投げることなら誰でもできる。それなら投げるだけで火が消える消火器があったら……という発想で出来上がったのが、「投げ消すSAT119」(参考価格5980円)だ。刈谷社長によると「投げて消す、というアイデアは古くからあり、江戸時代の町火消しが割れやすい陶器に砂を詰めて、届かない場所の火に投げていたそうです」という。

現代の投げる消火器はすごい。燃え盛る火の中に、青い消化液が入った「SAT119」を投げ込むだけで、あっという間に鎮火する。重さは約600gと軽く、子供、女性、お年寄り、だれでも簡単に使える。

消火の仕組みも小学生が理解できるほど簡単。火の中でボトルが割れて消化液が飛び散ると、炭酸ガスが発生し、酸素が遮断される。酸素がなければ燃えないから火が消えるというわけだ。

2004年の発売後、その威力が口コミでじわじわと広がり、07年には韓国で幼稚園や老人施設への設置が義務付けられた。日本では09年4月に東京消防庁が採用。避難路の確保などの用途に期待されている。

「SAT119が力を発揮できるのは、室内の火災の初期消火。完全な消火はできなくても、炎の広がりを抑えて避難したり、消火器を取り出して本格的に消火する余裕ができます」と刈谷社長。

9月1日は防災の日。新しいグッズを取り入れて、自宅やオフィスの防災体制を見直すいい機会かもしれない。