なにもかもやらねばならないという考えから課題を多く設定しすぎると失敗する。卓越したリーダーは、自分の設定した野心的な目標を実現するための優先課題を絞り込み、それを周知徹底させる術を知っている。

ラム・チャランは世界で最も成功しているCEOの指南役として、GE、KLM、デュポンなどの企業で35年以上にわたり舞台裏で活動してきた。今回は、今年出版された彼の最新書、『Know-How: The 8 Skills That Separate People Who Perform from Those Who Don't(ノウハウ──実績をあげる人の8つのスキル)』からの抜粋を要約してお届けする。

優先課題を設定するのは難しい仕事である。目標が5万フィートの高所に設定されるのに対し、優先課題は地上レベルに設定され、そこではリーダーは厄介な細々した事項をいとわずに調べる意欲と、最も重要な行動を決定し、その2番目、3番目の結果まで考え抜く粘り強さを持たねばならない。

正しい優先課題は、卓越した実行のカギとなる。それを明確に伝えられ、適切な周知徹底活動で補われることで、本当に重要なことが職場の日々のごたごたの中でレーダー画面から追い出されるのを防いでくれるからだ。

組織の優先課題を明確かつ具体的なものにすれば、社員は何に集中すべきかを理解する。しかし、それだけでは十分ではない。優先課題を設定したら、それを何度も繰り返して周知徹底させなければならない。

私は長年にわたり、十指に余る企業でその活動を最前列の席で眺める特権に恵まれてきたが、その過程で、最も有能なリーダーに備わっている卓越している8つの重要なスキルを突き止めた。そのひとつが優先課題にピタリと照準を合わせることだ。本稿では、2つの組織をとりあげ、それぞれが重要な優先課題を定め、社員に納得させ、課題実現のための資源配分をきわめて効果的に行えたのはなぜかを明らかにする。