失敗するかもしれない。嫌われるかもしれない……。そういう人に「気にするな」と言うのは逆効果だ。心配を解消するには「失敗してもいい」「嫌われてもいい」と開き直ることが重要になる。自分の性格の欠点を直すにはどうすればいいか。脳科学者と心理学者に聞いた――。(第4回、全5回)

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2016年10月3日号)の特集「毎日が楽しくなる脳内革命」を再編集したものです。

気にしないようにするのは逆効果

「日本人には、細かいことを気にするタイプが多いんです」と言うのは心理学者の諸富先生だ。病的なまでに細かいことを気にしすぎて、日常生活が送れなくなった人の治療法として、日本人の精神医学者・森田正馬が考案したのが「森田療法」である。これは簡単に言うと、細かいことを気にしすぎる人に向かって、「気にするな」と言うのではなく、気にしていることを認め、それでも日常生活でやるべきことを淡々とやらせるという治療法だ。

心理学者●諸富祥彦氏

たとえば神経質が高じて、体を洗う手順にこだわるあまり、入浴に2時間かかる人がいるとする。そのような場合は強制的に決められた時間内で風呂から上がらせる。

そして残りの時間でほかのことをさせるのだ。もちろん本人は苦しいが、苦しみながらもすべきことをしていくうちに、徐々に直っていくという。つまり細かいことが気になるなら、気にしないようにするのは逆効果。気にしつつも、やるべきことができていればよしとすべきなのだ。

また、細かいことを気に病んでしまう性格は自分で直すことができるという。

「細かいことにいつまでもこだわる人は、理にかなわない歪んだ思い込み(イラショナル・ビリーフ)を持っている。これを正しい考え方(ラショナル・ビリーフ)にするには、自分で自分を洗脳することです」(諸富先生)