この国のかたちをつくりあげた、有名無名な勇者たち73人の残した轍に、混乱の世を生きる現代人の道標を探す。あなたに似たリーダーは見つかるだろうか。

死して英雄度の上がった信長と比べると、秀吉は終始一貫して絶大な人気を誇る。成り上がりの代名詞であり、ひたすら陽性で気配りの名人。しかしどこか抜けたところがあり、世継ぎに失敗してしまうなどのエピソードも含め、多くの日本人が秀吉の愛嬌と身近さに魅了されるのだろう。

そこで、秀吉をあえて悪役に据えた『妖説太閤記』『秀吉の枷』などの面白さが際立ってくる。『新書太閤記』『新史閤記』といった正統派の他、のし上がっていく様にスポットを当てるか、天下を取ってからの後半戦に注目するかという絞り込み作品も秀逸。天下取りのきっかけとなった出来事を切り取った『天下を呑んだ男』もいい。どれをとっても秀吉という天下の“人たらし”、その面白さ、奥深さが堪能できる。秀吉本にハズレなしと言われる所以は、リーダーには人間的な魅力が必要不可欠、ということか。

未来を信じて突き進め!雄大な出世物語
『新書太閤記』吉川英治・著

生涯の主君・信長の下、未来を信じて突き進み、出世街道を駆け上っていく姿を活写。従来のサル面、ひょうげ者の秀吉像を脱却し、母親孝行で、向上心を忘れず、なにより真っすぐな心をもつ太閤が描かれている。全11巻。

司馬遼太郎の観察眼で斬る秀吉の人間力
『新史太閤記』司馬遼太郎・著

日本史上最高の“人たらし”と呼ばれた秀吉を、司馬遼太郎ならではの人間観察眼で綴る。時代を超えてなお輝く秀吉の人間力とは。

異色の太閤記。秀吉は、実は悪党だった!
『妖説太閤記』山田風太郎・著

「本能寺の変」は秀吉の陰謀だった──。人好きする面相の裏で、権謀術数でライバルを落とし、天下取りを図る。異色の秀吉伝。

「本能寺の変」以降の、もうひとつの物語
『夢のまた夢』津本陽・著

天下を取った男が見た夢とは?「本能寺の変」以降、天下を握った秀吉を描く。

陽気さに隠れた真実の秀吉とは
『秀吉の枷』加藤廣・著

その陽気さは演技なのでは。そんな厚みのある人間・秀吉を描写。

藤吉郎のポジティブシンキング
『俺は藤吉郎』川口松太郎・著

明るく逞しく生きる秀吉を、藤吉郎と呼ばれた少年期から描いた娯楽大作。

長大な全集にかわる簡潔な秀吉物語
『豊臣秀吉』南條範夫・著

簡潔にまとめられた秀吉の生涯。全体を俯瞰して知りたいときに重宝する一冊。

痛快な天下取り物語
『豊臣秀吉』山岡荘八・著

著者による信長本と併せて読むと激動の時代を余すことなく堪能できる。全8巻。

草履取りから始まる成り上がり一代記
『太閤秀吉』徳永真一郎・著

足軽の家に生まれ、信長の草履取りから身を起こした男の一代記。

成功への発想法が描かれている
『天下を呑んだ男』中村隆資・著

夢は身銭を切って見るもの――青年藤吉郎は旅の僧にこう言い放った。

(構成=須藤靖貴 撮影=宇佐見利明)