充実した老後を迎えるために、必要なものとはなにか。「プレジデント」(2016年11月14日号)の特集「上流老後、下流老後」から、「まわりから羨ましがられる」という3人の実体験を紹介しよう――。

OB会に出席すると皆に羨ましがられる

人材派遣・紹介会社の山本治さん(仮名)は、70歳になった今も常務取締役として週5日、フルタイムで働く。毎月の役員手当は手取りで約20万円。そこに月約20万円の年金が加わり、合計40万円ほどの収入だ。

山本さんは東証一部上場のメーカーに約30年間勤務し営業部長まで務めた後、いずれは独立するつもりで54歳のときに他メーカーに転職。2年ほど勤めてそろそろ独立しようと知人の経営コンサルタントに相談に行ったところ、「私の会社を手伝う気はないか」と誘われた。「慎重なタイプ」と自称する山本さんは方針を変更し、役員待遇で現在の会社に入社することに決めた。

「会社員を選んでよかった。自分で事業を始めていたら、24時間仕事から逃れられない。土日は仕事から離れられる今のペースは、自分に合っている」(山本さん)

以前の会社のOB会に出席すると、部長まで務めた人が警備員をしていたり、放置自転車の撤去の仕事をしていたりする話を耳にする。「そんな中で、私は皆に羨ましがられます」(同)。

現職を得るうえで営業職に長く就いたことが功を奏したとも語る。

「よい仕事に就くにはやはり人とのご縁です。営業の仕事は社内外に人脈を広げるには都合がよかった。今の仕事も、最初の会社でご縁のあった方からのお誘いでした」(同)。営業畑の長い人も、出会う人やタイミング次第では役員になれるのだ。ただ、70歳を迎えて心境に変化も出てきた。「さすがにフルタイムだと体がきつくなった。いつまで続けるか考えたい」(同)。仕事は好きでも体力は否応なく衰える。だが自分で「辞めどき」を選べる状況こそ勝ち組の証しだろう。