東京・上野の「アメ横」にほど近い高架下に、「ものづくり」をテーマにした「2k540」という商業施設がある。各地で鉄道高架下の再開発が進んでいるが、2010年開業の「2k540」は、そのなかでも成功例として有名だ。なぜ成功したのか。宗教社会学者の岡本亮輔氏は、「その土地の歴史を基本コンセプトとして取り込んでいるからだ」と考察する――。
高架下の建造物として柱をいかしたデザインの「2k540 AKI-OKA ARTISAN」(著者撮影)

「手仕事」の店が高架下に並ぶ

上野御徒町界隈の航空写真を見ると、戦前からJRの高架がよく目立つ。ただし、その下に何があるかは当然写っていない。現在、この高架下は商業施設になっている。JRが開発した「2k540」だ。2010年にオープンし、高架下再開発の成功例としてたびたび言及されている。開業直後は入居待ちのスペースが目立ち、土日でも人影がまばらなこともあったが、最近では、ユニークなショッピングエリアとして観光スポットにもなっている。

「2k540」の正式名称は「2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケー ゴーヨンマル アキオカ アルチザン)」だ。「2k540」は東京駅までの距離を示し、「Artisan」はフランス語で「職人」を意味している。実際に足を運んでみると、かなり個性の強いお店が多い。手作り感のある傘屋、帽子屋、アクセサリー屋などが軒を連ねる。個人的には、どんな場面で使えばいいのかわからないものが多いが、それでも見ているだけで楽しい。まさに職人仕事の店の集合体になっている。

いま、一部で「ハンドメイド」がはやっていると聞く。「2k540」に入るお店も、そうした流れの中にあると考えられるだろう。そんな流行の先端をいくお店が、東京東側の高架下にあるのは意外なような気もする。だが、御徒町界隈の歴史を振り返ってみると、このあたりには昔から創意工夫にたけた異業の人々が集まっていたことがわかってくる。この高架下が、「ものづくり」をコンセプトに再開発されたのは、必然だったのだ。