何が勝ち組と負け組を分けるのか。雑誌「プレジデント」(2017年3月6日号)の特集「『働き方』全課題60」では、「超一流の仕事術 全解明」として、より成果を上げるためのノウハウを各方面のエキスパートに取材。今回は、千葉商科大学専任講師の常見陽平氏が「残業させない技術」について解説する――。

「ちょっとスケジュール帳を見せて」

長時間残業は健康を害します。組織全体のパフォーマンスも落とします。それでも「終わるまで帰らない」と開き直る部下に、どんな言葉をかけるか。最もダメなのは「いつまで残ってるんだ」という一方的な叱責です。残業をするのには理由があるはずです。それは恐らく2つにわけられます。1つは「残業はしたくないけれど、残業をしないと仕事が終わらない」。もう1つは「成果を出すためにサービス残業でもいいから居残って仕事をしたい」。

前者であれば、「業務分析」を手助けしてあげましょう。ここでの業務分析とは、業務の背景・目的を明らかにしたうえで、理想と現実のギャップを洗い出し、それを解消する施策を提案すること。営業職でも可能です。さりげなく「ちょっとスケジュール帳を見せて」と言えばいい。「昨日は何件訪問した?」「それは新規、クロージング、情報収集のどれ?」などと質問して、部下の仕事の癖を見抜くのです。絶対的な経験不足は能力では補えません。経験豊富な上司がアドバイスをすれば、業務効率は改善します。

厄介なのは後者のような「モーレツ社員」です。これは「成果主義」の弊害としても知られています。内閣府経済社会総合研究所の研究では、成果主義的な評価を導入すると、労働時間がかえって長くなることが報告されています。より大きな成果を求めてオーバーワークをしたり、時間をかけて帳尻を合わせたりしてしまうのです。成果主義は本来、生産性の向上が目的なのに、単に労働時間が長くなる場合もあるのです。