国内市場は一転、拡大傾向

「アパレル産業は死んだ」……近頃、こんな声を耳にするようになった。2016年に経済産業省が発表した「アパレル・サプライチェーン研究会報告書」によれば、1990年に約15兆円だった衣料品市場規模は、10年には約10兆円にまで減少。20年間で市場規模が3分の2に縮小したのだ。

アパレルが売り上げの多くを占める百貨店では、不採算店舗の閉店が相次いでいる。またワールド、TSI、三陽商会など大手アパレルがブランド廃止を進め、全体の売り場面積が激減し、閉店数が増加とも報じられた。

消費者の意識も変わってきている。若者のあいだでは「毎日違う服を着るより、いつも同じ服で通すほうがかっこいい」「洋服は買うより借りたほうが経済的」というような新しい価値観も生まれている。こうした購買を志向しない状況から、「もはやアパレルやブランドは虫の息だ」という声が聞かれるようになった。だが本当にそうなのだろうか。筆者の考えは「ノー」だ。

前出の研究会の資料では、国内の衣料品市場は10年から拡大傾向にあると指摘。専門誌の繊研新聞によれば、06年に9兆5740億円だったアパレルの市場規模は、15年は9兆6019億円になった。

一方、消費者の平均購入単価は91年から13年にかけて、およそ3800円から2200円程度に下がっている。平均購入単価が大きく下がっているのに市場が微増ということは、洋服が安くなった分、点数を多く買うようになったということだ。つまり消費者はファッションに関心を失ったわけではなく、むしろ以前より安価でファッションを楽しんでいると考えられる。