恋愛、結婚、離婚、再婚、婚活、不倫……。世は変われども、男と女のいさかいが尽きることはありません。行政書士で男女問題研究家の露木幸彦氏のもとには、そんな泥沼状態を抜け出そうと、毎日多くの相談者がやってきます。その痛切なトラブルエピソードを、ぜひ他山の石としてもらえればと思います。
第3回のテーマは、4歳の息子の親権を巡る42歳の夫(会社員)、39歳の妻(専業主婦)の駆け引き。育児放棄の妻と離婚し子供を引き取ろうと四苦八苦する夫の話です。前後編の後編をお届けします。

前編のあらすじ:「早く食べないと殺すぞ」。子供にたびたび怒号を発する専業主婦の妻。子供の身の回りの世話や教育も半ば放棄。夫に注意されると、すぐに逆ギレし、泣きわめき、家出する。夫は息子を身体的精神的な虐待から守るため離婚することを妻に通告。承諾したかに見えた妻はとんでもない「見返り」を要求する――。

離婚には承諾するも「私が子供を連れて出ていく!」

離婚した元夫婦がその後も一緒に住み続けることはあり得ません。夫婦いずれかが「転居」することになります。相談者である夫の右原誠司さん(仮名・42歳・会社員、以下夫)の場合、現在の住居は賃貸物件で、契約者は誠司さんになっています。よって誠司さんは妻の凛子さん(仮名・39歳・専業主婦、以下妻)にこう切り出しました。

「悪いけど僕はこの家を出ていくつもりはないよ。離婚したら出て行ってほしい」

そもそも妻の息子(誠也、仮名・4歳)への言動がしつけの域を超え、虐待に当たるのなら、夫が警察へ被害届を提出した上で裁判所に接近禁止命令(保護命令)の申し立てをすることが可能です(DV防止法10条)。それを受けて、裁判所が妻に対して命令を発すれば、妻は自宅に住むことは許されません。

「遅かれ早かれ『奥さんが退去する』という結果は、裁判による強制退去にせよ、示談による自主退去にせよ変わらないのだから、わざわざ裁判沙汰、警察沙汰に発展させた揚げ句、“前科者”扱いされるよりは自主的に退去したほうが奥さんのためでしょうね」

夫は、男女問題研究家・行政書士である私がアドバイスしたとおりに妻に伝えたわけですが、なんと相手は「それなら誠也を連れて出ていく!」と言い出したというのです。

▼育児放棄の妻「私が立派に育ててみせるわ!」

あくまでも仮の話として、もし妻が子供を引き取り妻の実家や別のアパートで暮らし、他の学校に転校させた場合、子供はどうなるでしょうか? 離婚という両親の都合で子供の生活・住居・教育環境をころころと変更すれば、人格形成や学力向上などさまざまな面で悪影響を与えることは容易に想像できます。

※写真はイメージです

逆に、夫が息子を引き取れば、現在の住居で暮らし、自分の部屋や今の学校、友達や地域生活は何も変わりません。

今回の夫婦の場合、育児の多くを夫が担っていました。客観的に判断して、子供の前から母親がいなくなるより父親がいなくなるほうが息子にとって影響が大きいことは明らかです。これらの事実を踏まえた上で、夫は「僕が引き取ったほうが誠也のためだろう」と妻に伝えたのですが、「私が立派に育ててみせるわ!」と食い下がり、引き下がる様子は見せなかったといいます。