英語を社内公用語とする企業が増えつつある。だが、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「日本人どうしでの英語のやりとりを『恥ずかしい』と感じるのには、相応の理由がある。無理に導入すれば、職場の人間関係が悪くなり、社員のストレスも高まるのではないか」と指摘する――。

だって、恥ずかしいじゃないか……

ビジネスマンにとって英語力は必要不可欠だ! TOEIC800点以上は必須だ! みたいな論調で「とにかく英語をマスターしろ!!」と煽るような意見は、けっこうな頻度で見聞きするものだ。

ただ、少々毛色の異なる記事をプレジデントオンラインで見かけた。今年11月22日に掲載された「英語の達人が社内公用語に賛成しないワケ 母語でしっかり考えることが重要」(http://president.jp/articles/-/23613)という記事で、NHKラジオ「実践ビジネス英語」講師の杉田敏氏がこう述べている。

<拙い英語に日本語と中国語が混じり合って、かえって意思の疎通を阻害している。一番の弊害は、英語の不得意な人はまったく蚊帳の外に置かれてしまうことです。これは人材を活用するという面からも残念なこととしか言いようがありません。

やはり母語としての言葉が、ビジネス上で戦略的思考をするための重要な武器です。日本語できちんと考え、正確な文章を組み立てるということがまずは大事ではないでしょうか。>

私も昨今の「英語を社内の公用語にしよう」といった論には反対だ。杉田氏の意見にも同意する。だが、私にはもうひとつ、反対する大きな理由がある。それは実に単純すぎる話で、

日本人どうしで英語を喋ると恥ずかしい

ということに尽きる。もちろん、会議に何カ国もの人が参加していて、英語が共通言語になっている場合は英語で喋るほうがいいだろう。しかし、日本人どうしであっても英語で会話しなければならないといった場面では、これまでの経験上、面映ゆいことばかりだった。お互い日本人であるにも関わらず、

「Hiroyuki, What's up man!(ヒロユキ、調子はどうよ?)」
「Not much dude!(まぁまぁだぜ、この野郎!)」
「Yeah!(イエェイ! ※で、ハイタッチ)」

などとハイテンションでやっているのは、非常に恥ずかしい。また、たとえば販路拡大について会話しているとき、

「How about making an appointment to Takashimaya or McDonald's?(高島屋かマクドナルドにアポを取るのはどうだろう?)」

なんて一節を、「タァカァシィィメァヤァ!」とか「マクダーノルズッ!」などと英語式に発音しなければならないとしたら、もはや拷問である。日本人なら「高島屋」や「マクドナルド」と平坦な抑揚で言うのが、やはりしっくりくる。なお、この原稿に登場する英文は厳密なものではない。日常会話によく見られる、正式な文法には即していない表現だとお含み置きいただきたい。